脳の仕組みと働かせ方を知って成績をアップ!
子どもの成績をアップさせるためには、まずは下地作りが大事です。親が子どもを丸ごと認め、愛情を注ぐこと。子どものやる気を引き出し、育てること。親自身が学ぶ姿勢を忘れず、自分自身の価値観をしっかりと持つこと。つまり、子どもが勉強する上での下地作りは、親にかかっていると言えるのです。これをしっかり理解し、子どもに向き合っていきましょう。
下地作りができたら、次は具体的な方策です。実は、脳の仕組みを知り、上手に働かせていれば、子どもの成績は必ずアップしていくものなのです。ご一緒に考えていきましょう。
本を読むこと、家庭学習することを軽んじていませんか?
学びの基礎ともいえること、それは、「読む」ということです。それができなくては、どんな勉強にも躓いてしまいます。成績を上げようと思ったら、自分の机の前に座り、本の世界へ引き込まれるという習慣をつけましょう。
最近の子どもたちの本離れは、多くの方が危惧していることです。本を読む習慣がついていないので、いざ本を読みましょうと言われても、なかなかじっと座っていられず、本の世界に入り込めない子どもが増えてきているのです。
子どもたちの学習到達度を計るある調査によれば、日本の子どもたちの読解力が非常に低下してきているのだそうです。日本の子どもの本離れが、ここにも影響を与えていると思わざるを得ません。
文章を読む機会がなくなり、読解力が落ち続ければ、相手の話を理解する力も落ちていくはずです。普通なら、相手の話を聞きつつ、頭ではそれに対する自分の意見を考えることもできるのですが、それも難しいことになってしまうのです。
繰り返しますが、全ての学びの基礎は、「読む」ということにあります。文章を読んで、あるいは誰かの話を聞いて、今度は自分の言葉で話したり、書きあらわしたりする。どんな勉強でもそれができなければ話になりません。なかなか成績が伸びないなら、まずは本を読む習慣をつけてみましょう。
近頃の子どもたちには、本を読まない傾向がみられるとともに、家庭学習の時間がなくなってきたという特徴も浮かび上がってきています。学校が終わったら自宅で勉強するのではなく、塾に行く子どもが増えてきているからでしょう。塾に行けばもうそれ以上勉強することはない、となっている子どもが多いのです。
子どもの約半数が、家庭学習を全くしていないという調査結果もあるくらい、この傾向は強まっています。そのこと自体、深刻なことなのですが、実はもっと深刻なのは、家庭学習をしない子どもの親は、そのことを重大なこととは考えていないケースが多いということです。自分の家で勉強してないけれど、塾には行っているじゃないか、と考えるわけですね。
塾での勉強と、家庭での勉強とは全く違うものです。塾では、講師が前に立って解き方などを説明します。すごいスピードで行われるそれに遅れないように、ノートをとったり問題を解いたりするのがやっとです。ということは、自分が苦手な問題に時間をかけて取り組んだり、講師の説明をわかりやすくノートにまとめたりすることは、塾ではできないのです。
このようなことも、勉強する上では非常に大事なことですから、塾の他に家庭で勉強する時間も必要不可欠なのです。もしかしたら、子どもはその大切さに気付いているかもしれませんが、そんな子どもでも必ず家庭学習ができるようになるとは限りません。
親が子どもの勉強に関心を持たず、塾に行っているからいいだろうと考えていては、子どもだけで何とか家庭学習の癖をつけようとしても、それはなかなか難しいことなのです。
家庭学習は、とても大切です。そのことに、どうか親御さんたちも気付いてほしいのです。学校や塾とは違って、家庭学習は自分から取り組むものです。本来勉強というのは、自分が「知りたい」「わかりたい」と思って始めるのが、一番楽しくなるものです。
家の自分の机に向かって、自分が分かりたいと思ったことについてとことん勉強する。これはとても面白いことであるはずなのです。学校とか塾とか、常に受動的な勉強の仕方に慣れていて、家庭学習の癖がついていない子どもは、その面白さを知りません。だから、勉強が嫌になってしまうのです。
親御さんたちにはぜひとも、このことを理解していただき、家での環境づくりに努めていただきたいものです。子どもが勉強できる時間に、テレビをつけて家族で大笑いしていては、子どもはどうしても気になって、勉強する気になれません。子どもが自宅で勉強に取り組みやすい環境を作ってあげてほしいのです。
親が勉強について口出ししすぎるのも困りものですが、子どもの家庭学習について全く無関心でいるのも、同様に問題だと言えるのです。子どもが勉強しやすい静かな環境を作り、それで子どもがすすんで勉強していたとしたら、大いに褒めてあげてください。それが、子どもの勉強する気を育て、成績アップにつながるのです。
子どもは強いストレスを与えられると成績が落ちるもの
大人は知らず知らずのうちに、子どもにプレッシャーをかける時があります。そのプレッシャーが強すぎて、子どもがストレスに感じると、成績に悪影響を与えることがあるのです。例えば、塾においてテストの点数や順位を発表したり、成績ごとにクラス決めを行ったりすることはよくありますが、これは子どもにとっては大きなプレッシャーです。
塾側にとっては、このようなプレッシャーを与えることで、子どもを奮起させたいのでしょう。ですが子どもにしてみれば、「成績が落ちて下のクラスに落ちてしまったら、お母さんに怒られるだろうな、他の子の目も気になるな」と、大きな不安を感じてしまうものなのです。
ここで、脳科学の注目すべき実験結果をご紹介しましょう。脳に強いストレスをかけると、脳内における情報の伝達速度が低下するというのです。そうなると記憶に支障が出るなどして、脳の動きが悪くなってしまうのです。この実験結果が何を意味しているのかというと、強すぎるストレスがあると、勉強がスムーズに進まなくなるということなのです。
さらに言うと、強いストレスをかけられても、全ての子どもが成績を落とすわけではないという事実もあるのです。そう、プレッシャーによるストレスを感じると勉強の能率が下がる子どもが大多数である中で、逆に成績を伸ばしてくる子どももいるのです。それはどのような子どもだと思いますか?
正解は、普段から良い成績をおさめている子どもたちです。100人中10位以内、もしくは20位以内に入っているような成績優秀な子どもたちは、強いプレッシャーによってやる気を失うどころか、かえって奮起して、より成績を上げることができるのです。なぜそうなるのでしょうか。
それは、このような子どもたちはこれまでの経験から、「自分ならやれる」という自信を持っているからです。彼らは今まで、勉強を頑張ってやることで、テストにおいてよい成績をおさめ続けてきました。一生懸命勉強したらそれが報われた。そんな経験が豊富にあるために、今回も頑張ればきっと成績を上げられるはず、と思うことができるのです。
このような子どもたちは、勉強に関するプレッシャーを与えられると、脳内にドーパミンが分泌されます。ドーパミンは幸せな気分にさせたり、気持ちを盛り上げ、意欲を引き起こさせたりする物質ですから、大変な状況にもかかわらず、心が奮い立たされているわけなのです。
彼らは、「難しい状況だけれど、自分はきっとまた成功する。きっと上位をキープできる」といったポジティブな考え方をすることができます。そうなると、やる気は自然と怒りますし、これまでにも増してバリバリと勉強を進めていけるのです。
先ほども言いました通り、多くの子どもたちは、プレッシャーによる強いストレスでやる気を失い、成績を落とす傾向にある一方、限られた子どもたちにおいては逆に成績をアップさせていくのですから、上位の子とそうでない子の間には、どんどんと差ができていってしまうことになるのです。
子どもたちは、大人が考えるよりもずっと繊細な心を持っています。大人は、一人一人の子どもの状態をよく観察し、この子は勉強に関するプレッシャーを受けて良い方向に向かうのか、それとも悪い方向に向かうのかということを判断しなければなりません。
「成績が下がったらどうしよう、合格できなかったらどうしよう」と不安でいっぱいになっている子どもに対して「成績が下がると、塾の中でも下位のクラスになってしまうぞ」というようなプレッシャーをかけて競争をあおっても、かえって悪い結果を導いてしまうことが多いもの。
このような子どもにプレッシャーは禁物です。小さなことでもいいから「頑張ったらできた」という経験を少しずつ増やしていくことで、「大変な状況でも、自分ならやれる」という自信をつけさせてあげましょう。そこまで導いてあげれば、子どもは自分からどんどん成長していけるのです。
逆に、子どもがせっかく勉強をやる気になり始めている場合でも、そのやる気を失わせてしまうような状況を作らないよう気をつけましょう。勉強するぞ、という気持ちになっていたのに、家に帰ればいつもテレビはつけっぱなし、テレビゲームも出しっぱなしになっているような環境も、本人のやる気を失わせてしまいます。気をつけてくださいね。
一般的に、ちょうどよい強さのプレッシャーであれば、かけられた方が良いと言われています。そうすることで、ほどよく緊張して頑張ることができ、良い結果を生み出すことが多いのです。
でもそうなるには、「できた!」という感覚をたくさん経験し、「自分ならできる」という自信をもたせることが必要なのです。このような自信を持った子どもであれば、どんな困難にぶつかっても、自分の力で克服していくことができるはずです。
うまくいっている子どもは、「やればできた」という経験を覚えていますので、多少のプレッシャーがあってもその経験を思い出し、今立ち向かっている問題をクリアしている自分を想像することができます。最初は「うまくいかなかったら大変なことになるぞ」という気持ちになったとしても、いずれは自信がその不安を上回り、結局はまた成功を収めることができるのです。
このような流れに乗ることができれば、困難なことがあっても、そんな時こそ底力を見せつけ、本番にはいつも大成功するような子どもになれるのです。
「なぜそうなるの?」と聞いてくる頃が、脳を成長させるチャンス
「うちは夫婦そろって成績が良かったわけではないから、子どももそんなに期待できないわ」などと思わないでください。子どもの成績の良しあしは、遺伝によるものではありません。どんな親でも、子どもの脳が成長するタイミングを知り、それに沿って適切なかかわりをしていれば、子どもは伸びていくものです。
脳が成長するタイミングはズバリ、「なぜそうなるの?」といった質問をしてくる頃です。それはだいたい小学生くらいのころになります。優秀な子どもの親はたいてい、この頃の子どもに対して、「なぜこうなると思う?」と自分で考えさせているのです。このような親の質問は、イエスかノーかでこたえられるような単純なものではありません。
そのような質問形式は、子どもの脳を成長させてくれます。それはなぜなのかというと、脳の成長の仕組みに鍵があります。「なぜそうなるの?」と子どもが問いかけてくる時期は、ちょうど脳の記憶の仕組みが変わってくる時期と重なっているのです。
記憶の仕組みは、幼い頃と大人とでは少々異なっています。10歳ころまでの脳は、物事を丸暗記して覚えています。与えられたものをそのまま覚えるのですから、受身的と言っても良いでしょう。
10歳ころまでの子どもは時に、大人が「この子は天才だ!」と思うような記憶力を見せつけてくれることがあります。全国の鉄道名を全て覚えたり、百人一首を全て覚えて言ってみせたり…。このような子どもたちが出てくるのは、この頃の子どもたちが丸暗記の記憶が得意だからなのです。
この頃の子どもの記憶の全てが、丸暗記であると言ってもいいくらいです。だから、大人がこのくらいの年ごろの子どもに、丸暗記で対抗しようとしても勝てるわけがないのです。
幼い子どもは丸暗記でいろいろなことを覚えていきますが、あるころを境に、記憶の方法が変わっていきます。だいたい10歳くらいの頃からは、今までに覚えてきたこと同士を結び付け、体系的に、筋道立てて記憶していくことが増えていきます。これまでは受身的な記憶でしたが、ここからは少しずつ、自分から働きかけながら覚えるようになっていくのです。
この記憶の方法は10歳くらいから始まって、中学生の頃には記憶の仕方のほぼすべてが、筋道立てた覚え方になります。すると、今までとは違って丸暗記の方が苦手になっていきます。このくらいの年齢からは、意味づけしたことや筋道だっていることでないと覚えにくくなっていくのです。
幼い時には丸暗記でいろんなことをすぐに覚えられたのに、途中からだんだんとそう言うことが苦手になって、自分なりに意味づけをしたり筋道を立てたりしながら出ないと覚えられなくなっていくということは、多くの人が経験してきているはずです。これは、成長に伴って記憶の方法が変わっていくものだからなのです。
さて、丸暗記の記憶方法から、意味づけによる記憶方法に移行していく時期は、10歳くらいだと言いましたが、その表れと言えるものが、この頃の子どもたちがしばしば口にする「どうしてこうなるの?」という疑問です。
ですから、子どもたちがこのような疑問を大人にぶつけるようになってきたら、脳の成長の証しととらえてください。このような疑問に答えるのはなかなか難しかったり面倒だったりするものですが、決してないがしろにしないでください。この疑問にきちんと対応することが、子どもの脳を鍛えることになるからです。
それに、「今は忙しいから後にして!」とはねつけてしまうことが重なると、「なぜだろう」という疑問をもってはいけないのだと子どもは勘違いし、勉強において非常に大切な「疑問をもつこと」自体をしない子どもになっていってしまいます。あるいは、疑問をもっても、それは聞いてはいけないのだと思ってしまうのです。
「どうしてこうなるの?」と、物事の意味付けや筋道に関する質問には、きちんと反応してあげましょう。質問に対する答えを提示してあげることが大事なのではありません。「そうだね、どうしてだと思う?」と、子ども自身に考えさせるのです。子どもが質問してきていない時に「なぜこうなるのだと思う?」と投げかけるのも効果的です。
記憶の方法が切り替わるタイミングをとらえて、物事の持つ意味や筋道というものを考えさせてあげれば、大人の脳がやる記憶の方法を、子どもにもしっかりと身につけさせてやることができるのです。
きちんと覚えられて忘れにくくするための方法とは
子どもだけでなく、大人もやはり、どうすればいろいろな物事を要領よく覚え、しかも忘れないようになるだろうかと考えるものです。記憶の仕組みを知れば、しっかりと覚えるコツをつかむことができますよ。
幼い子どもが何かを記憶する時、脳は丸暗記という方法で覚えます。ところが10歳ころを境に、だんだんと物事の意味づけをしながら覚える方法に切り替わっていきます。こちらの方法は、覚えたいそのことの意味がきちんと分かり、その上でどうしてそうなるのかというような理屈の部分まで含めて覚えるようなやり方です。
ですからこの方法は、丸暗記して覚える方法に比べて、ずっと覚えていることができるのです。意味を考えず丸ごと覚えようとするよりも、意味をきちんと知り、自分なりに合点がいったことについては、いつまでも忘れないものですよね。
記憶が印象付くには、強い感情が引き起こされるということもまた、大きな要因となっています。楽しさや面白さなどの感情は、記憶をしっかりと定着させるのです。それはなぜかというと、これらの感情は、脳の中の神経伝達速度を速める、つまり、脳が活性化するからなのです。
大きなストレスは、脳内の神経伝達速度を低下させますが、ストレスとは対極にある楽しさ、うれしさ、面白さなどを感じることで、脳の働きは活性化し、記憶する力も強まるのです。勉強においてこのような気持ちを感じられるようにすれば、記憶力もアップするというわけです。
それから、物事同士がどのようにかかわりあっているのか、どのような法則にのっとっているのか、そのようなことがわかると、より論理性が強まりますから、記憶しやすくなると言えます。
例えば、「あいうえお かきくけこ さしすせそ」という文章を何秒か見て、その後は別の事をして時間を過ごし、少ししてから思い出せと言われたら、きっとほとんどの人が覚えていることでしょう。
でも、「たちつてと らりるれろ はひふへほ」という文章だったり、あいうえお表とは全く関係のない「らひむけと あにつめこ なきるへよ」などの文章だったりしたら、覚えていられなかった人は増えるはずです。
あいうえお表の通りの順番という法則がある時には、難なく覚えられるのに、何の法則も見いだせない文章になった途端、覚えにくくなってしまうのです。この事を知っていると、何かを覚える時には、そこにある法則や関係性を探せばよいのだということに気づくことができます。
語呂合わせにして年号を覚えることは、社会のテスト勉強の際に多くの人がやったことでしょう。この時も、ただ数字と文字を組み合わせるではなく、文字の方にはきちんとした意味のある文章にするように工夫すれば、覚えやすくなったはずです。
さらに、その年に起こった事柄に関係のある文章にすることができれば、年号のみならず、その歴史上の出来事の詳細までをも覚えることができるのです。このようにして語呂合わせを作れば、より記憶が確かなものとなります。これは、法則や関係性を組み合わせた方が、記憶は定着しやすいという脳の仕組みを、うまく利用したものと言えるでしょう。
このように、記憶の仕組みを理解すれば、より覚えやすく、より忘れにくくなるのです。あなたのお子さんが勉強している時、なかなか覚えられずに苦労しているようなら、上記に述べたようなことをアドバイスしてあげてください。
ちなみに、わたしたちは年齢を重ねるうちに、物忘れがひどくなっていくものですが、これは、今まで物事に意味合いを持たせながら覚えてきた記憶が、時間が経つうちに少しずつ薄れていってしまうからです。
それに、若い時には感じやすかった心が、老化にともなって、あまり動かされなくなってしまうものです。つまり、「楽しいな」「面白いな」と感動するような機会が少ないため、脳内の情報伝達が活発に行われなくなってしまい、記憶力も低下してしまうというわけなのです。
10歳ころまでは基礎的な知識をどんどん教え込もう!
勉強するのに欠かせない、考える力。この力を身につけるには、まずは言葉に関する知識を会得し、言葉を操ることができるようにならなければなりません。どんな勉強をするにも、これができないと先に進めないのです。
赤ちゃんの事を考えればわかるでしょう。赤ちゃんは、自分の周りにある物や人の名前から、まずは覚えていくはずです。一つ一つ、言葉に置き換えつつ、自分の周りの様々なものを理解していくのです。
この作業が繰り返され、言葉の知識が増えていくからこそ、成長したのちに、ややこしい問題についても、ちゃんと考えることができるのです。
ですから子どもが幼いうちは、できるだけたくさんの事を覚えさせるのが大事です。言葉だけではありません。算数で出てくる九九なども含め、学習の基礎的な部分をしっかり覚えさせるのです。
脳は、10歳ころまでは丸暗記する覚え方が得意ですから、その頃まではどんどん子どもに知識を身につけさせましょう。そうすれば、この時期以降に、複雑なことを考えられるようになっていくのです。
さて、いろいろな知識をたくさん頭に入れさせようと言いましたが、その方法として一番おすすめしたいのが、読書です。本には、文字だけでなく、実に様々な知識がたくさん詰まっています。子どもにはぜひ、小さい頃から本に親しませたいものです。子どもが好んでよく読むジャンルからでいいですから、たくさん読ませてみましょう。
いろいろな知識を身につけさせたい、という考えから、早いうちから英語教育を我が子にさせる方も多くいらっしゃいます。確かに、小学校に入る以前から英語に触れてきた子どもは、日本語での思考も、英語での思考もできるようになるそうです。
ですが、英語の早期教育のために、子どもの頭の中で英語と日本語とがごちゃ混ぜになった状態になり、全体的に言葉に関する力が低くなってしまう場合も、なくはないのです。その辺も考慮したうえで、日本で育つお子さんが、英語教育を早くからやるべきかどうかを、よく考えてみてください。
百ます計算も音読も、その効果を知らなければやっても意味がない
「百ます計算」をご存知ですか?日本を代表する教育者である、隂山英男さんが考案された、計算トレーニングの一種です。大きな話題となったため、聞いたことがあるという方が多いでしょう。
ただ、「百ます計算は計算力を高めてくれるもの」と考えているのでしたら、それは少々違います。どちらかというと百ます計算は、これから始まる勉強の準備運動としてふさわしいものだからです。なぜ百ます計算は、勉強の準備運動にぴったりなのでしょう。そのわけをご説明しましょう。
一つ目は、百ます計算が脳を勉強しやすい状態に整えてくれるから。どんなに足の速い陸上選手でも、準備運動もせずに突然全力で走り出したらケガをする恐れがあります。ストレッチなどをした後、軽いランニングをこなして体温を上げ、それから100mなり200mなりを走るはず。きちんとステップを踏んでから始めれば、本当の力を出すことができるのです。
勉強にも同様のことが言えます。算数の勉強をしようと机に向かってまず始めにすることが、とても難易度の高い問題だったとしたら、頭が混乱してしまい、うまく考えられないはずです。
でも、算数の勉強の始めに、百ます計算をはじめとする、単純な計算問題を一定時間やることで、脳は勉強のための態勢が整い、難しい問題を解くための準備ができるのです。実際、百ます計算をやると、脳の前頭前野の血流が良くなるそうです。そのような状態になると、脳は活性化するのです。
脳の準備運動には、百ます計算だけが適しているのではありません。音読も非常に効果的です。文字を目で追うだけでなく、声に出して読み上げるところがポイントです。この作業が、前頭前野の血流を良くしてくれるのです。
百ます計算が、勉強前の準備運動に適している理由の二つ目は、子どもの意欲を引き出してくれるからということです。百ます計算は、ただ解くだけでなく、かかった時間を毎回計ります。百ます計算はやったらやっただけ、どんどんかかった時間が短くなっていきます。自分の成長が数字できちんと表されるのですから、子どもの意欲は高まります。
百ます計算は、前頭前野の血流を良くし、脳を勉強する態勢に整えてくれます。さらに、解くのにかかった時間がどんどん縮まっていくため、子どもの意欲が向上するのです。だから、百ます計算は、勉強の前の準備運動にぴったりだと言えるのです。
このことをきちんと分かっていないと、百ます計算は意味をなしません。例えば、計算能力を上げようと考えて、百ます計算ばかり何時間もさせても、その子の算数の成績が上がるわけではないのです。音読をすれば国語力が上がるかと思って何時間も読み上げさせても、国語の成績は上がりません。百ます計算も音読も、勉強の前に10分間もやれば十分なのです。
勉強が難しくなる中学生になっても、ぐんぐん成績を伸ばしていくには
「うちの子、小学生の頃はかなり成績が良かったのに、中学生になったら突然成績が悪くなったのよね…どうしてかしら?」そう思っている親御さんは、決して少なくありません。特に、女の子によくある現象のようです。思い当たる親御さん、あなたのお子さんは、小学生の時の勉強と言えば、教科書やノートを丸暗記する方法でやってきていませんでしたか?
脳は、10歳ころまでは丸暗記という方法で物事を覚えていきます。それ以降は次第に、物事の意味づけをしながら覚えるやり方になっていきます。そして丸暗記が主流だったころに、そのやり方でかなりよい成績をとってきた子どもは、そのやり方に慣れすぎて、意味づけをしながら覚える方法が身に付きにくい場合があるのです。
ご存知の通り、小学校の勉強と中学校の勉強とでは、難しさが格段に違います。さらに、覚えなければならないことも大幅に増えてきます。丸暗記の方法だけでは脳が整理されず、覚えきれなくなってしまうのです。ですから、中学生の頃には、意味づけをしながら覚えるやり方に移行していないと、成績が伸びなくなってしまうのです。
10歳を過ぎたら、今までの丸暗記の方法ではなく、物事の意味や背景なども考えつつ、穂の事と物事とを結びつけ、自分で納得しながら覚えるやり方を身につけていかなければなりません。
脳は、覚えることのできる決められた量というものはありません。昔覚えたことは、時がたつにつれ、脳内から消えていくのではないのです。覚えたことは脳にたまっていきます。そして、似通った情報や関連性が深い情報などは、お互いにくっつき合ってまとまっていき、脳の中で整理されていくのです。
ですから、新しく記憶されたことも、元からあった記憶と結びついてひと塊となり、脳内の情報は無限に増え続けていくことができるのです。
このように、情報を関連性のある物同士に分類して記憶したものがどんどんたまってくると、一つの問題を解こうとしたとき、脳の中にある情報をパッと引き出すことができ、さらに、それに似ている情報もたくさん引き出すことができます。問題を解くための情報がたくさん引き出せれば、それだけ回答しやすくなると言えます。
ですから、小学生の頃に頭が良かった子どもが、中学校に行ってもますます成績を伸ばしていくには、物事の意味を考え筋道立てて、納得しながら記憶していくやり方を習得しなければならないというわけなのです。
物事の裏側にある「理由」を考えれば、子どもは伸びていく
人間にはもとから、知的好奇心が備わっています。「どうしてだろう」「どうしたらもっと良くなるだろう」そのような気持ちがあったからこそ、人間はここまで文明を発展させてきたのです。生活をもっと良くしたいという気持ちから、様々な発明が生まれてきたのです。
この知的好奇心が、子どもの勉強にとっても大切なものと言えます。勉強の途中で、あるいは生活していく中で、「なんでだろう」「どうしたらうまくいくだろう」といった気持ちを大切にし、とことん調べる機会を与えてあげましょう。
子どもたちの疑問には、大人でも窮してしまう場合が多くあります。そんな時でも、子どもの疑問をはぐらかしたりしないでください。大人が「わからない、知らない」と言ってもいいのです。ただし、何を調べたらその疑問が解決しそうか、それなら大人には分かるはずです。それをヒントとして子どもに与えれば、子どもの知的好奇心はぐんぐん伸びていきます。
このような対応をすることで、「不思議だな」「もっと良くしたいな」という気持ちを持つことはいいことなのだと考えるようになるでしょう。
人は、不思議に思う気持ちから勉強をし続けてきました。今ここにあるものや現象だけを知識として覚えるだけでなく、その裏にある「なぜこうなるのか」という「理由」を理解することは、その物をより詳しくしっかりと知ることになるのです。
世間で起こる様々な事件にも、歴史上の大きな出来事にも、わたしたちの暮らしを変えた様々な発明にも、その裏には必ず、背景や理由が存在します。学校の授業ではとかく、「起こったこと」「できあがっているもの」だけを詰め込もうとしがちですが、本当はその裏にある背景や理由までをも含めて、学習するべきなのです。
歴史を学ぶことは、昔の人たちの考え方を知り、どのような経緯で何を起こしたのかを知ることです。だから、過去の事を学べば、わたしたちがこれからどのように生きていくべきかということまで、学ぶことができるということなのです。
また、物事の裏にある理由や背景を考えることは、人とのコミュニケーションにおいてもいい影響を与えます。誰かと話をしている時、その人の言った言葉がいったい何を意味しているのかを考えたり、その人はどのような気持ちでこの言葉を言ったのかということを考えたりすることは、より深くその人を知ることになります。
そして、そういう話の聞き方をすることができれば、一つの物事からもたくさんの有用な情報を得ることができるようになるのです。
子どものやる気を引き出すには適切な刺激を与えること
やる気は、全ての行動のきっかけになります。ですが、このやる気を子どもから引き出すのに苦労している親御さんは、たくさんいらっしゃることでしょう。散々声掛けをしてきたけれどなかなか勉強する気になってくれない、だからもう、自分からやろうとするまで待つことにする、と決めたという話は、よく聞く話です。
確かに、自分からやる気を起こさなければ、成績は伸びません。でも、放っておいても結局子どものやる気は起きなかった、ということの方が多いのです。このやり方では、子どものやる気を引き出せないと言えるでしょう。
人は、脳にある程度刺激を与えなければ、やる気が生み出されないものです。つまり、親の方から何かしらの行動を起こし、子どもの脳を刺激してあげればよいのです。どんな刺激かというと、それは子どもが楽しさや驚きを感じるような刺激です。そのような刺激がもたらされる経験を与えてあげればよいのです。
もしも子どもにピアノを習わせたいと考えるならば、「ピアノを習いなさい」とだけ言っても、あまりやる気は起きないでしょう。プロのピアニストが弾いている様子を見せたり、ピアノコンサートを聴きに行ってみたりして、子どもが「素敵だな、なんてきれいな演奏だろう」などと感動すれば、ピアノをやりたいと思う可能性は高まります。
そしてこの方法は、子どもに勉強させたいときにも使えるのです。小学校に入学したばかりの子どもは勉強についてのイメージがまだできていませんから、そんな時期に勉強への意欲を持つことは難しいでしょう。また、勉強に躓いてしまっている子どもも、勉強する意欲が低くなっています。このような子どもは、頭が混乱していて他の知識を詰め込むことができなくなっている状態です。
勉強へのやる気がない子どもには、少し親がつき合ってあげる必要があります。問題を解いたり教科書を見たりしながら、子どもはどこが分からないのかを探しましょう。そして、一つ一つ丁寧に教えてあげるのです。ゆっくりであっても、「わかった!」という感覚を味わうことができれば、その体験が脳を刺激します。
それが繰り返されることで、子どもの勉強に対するやる気が少しずつわいてくるのです。