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女子校での教育が日本を変える

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女子校生

「28歳女性」というフレーズを聞いて、あなたはどのように思うでしょうか。女性にとって28歳とは、大きな人生のターニングポイントとなる年齢だと一般的に言われています。このように言われる所以は、結婚、妊娠、出産、と人生の大きな選択を迫られるタイミングだからです。

 

この年齢となった時の自分を、どれだけ早い段階でイメージすることができるかが、今後女性が社会に進出して自由に働ける鍵となります。そして行く行くは日本社会の変革にも大きく影響を及ぼすことになるかもしれません。

 

女子校の新しいキャリア教育

世の中には様々な種別の学校が存在します。その中には、男子校、女子校、共学校といったように生徒の性別によって識別されるものも存在します。男子には男子の、女子には女子の、それぞれに合った教育カリキュラムを施すことで、生徒たちの個性は飛躍的に伸びていきます。

 

勉学の面では、男子と女子では、学習の方法やスピードに大きな違いがあります。特に中学校・高校に通う頃の男女においては、その差が大きいです。共学校ではそれぞれの性別の生徒が混在するため難しくても、男女別学校ではそれぞれの性別の特長に合わせて授業の構成やスピードを工夫することで、生徒たちの成績を伸ばすことができます。

 

また生活指導の面においても、男女それぞれに違った特長が存在することをふまえて、特長に合わせた指導をする学校もあります。例えば男子生徒には一度失敗を経験させること、女子生徒には厳しい枠組みの中で自ら考えさせて行動させること、などです。

 

男女別に指導することで、生徒たちにとってよい教育効果が得られているのは、勉学や生活指導だけではありません。学校を卒業した後のライフデザインを意識させる、いわゆるキャリア教育においてもその効果は十分に期待できます。

 

「女子」の特性に特化した新しいキャリア教育を進めている女子校があります。品川女子学院の「28プロジェクト」は、女子校ならではの新しいキャリア教育として、メディアによる注目もとても高くなっています。

 

漆紫穂子校長は、この「28プロジェクト」について、女子校の新しい使命の一つだと考えているとコメントしています。

 

これまでも女子校のメリットは、女子に特化した細やかな指導ができることや、ジェンダー・ステレオタイプに縛られないということだと認知されていました。しかし、これからは女子に特化したキャリア教育を行うことで、行く行くは女性として社会に進出して活躍できる仕組みを作ることも重要だ、と考えているのです。

 

「28プロジェクト」の28とは、女性の人生において、あらゆるターニングポイントとなり得る28歳を意味しています。28歳の女性は、仕事では経験を積み、重要なポジションを任されるようになる頃です。その一方でプライベートでは、将来を見据えた結婚や妊娠、出産を考えたり、経験したりする頃でもあります。

 

この28歳を、計画的に上手く過ごすのか、無計画にその場しのぎで過ごすのかによって、今後の女性の人生は大きく変わっていくと、品川女子学院は捉えています。そのため中学生のうちから、28歳の自分をイメージさせて、そうあるためには何が必要で、どのように行動すべきかを考えさせているのです。

 

女性のタイムリミットをふまえたライフデザイン

漆紫穂子校長は、女性の性的な事情によるタイムリミットを見据えた、ライフデザインを組み立てる必要性を説いています。性的な事情とは、妊娠・出産のことです。男性と比べて女性の方が人生の選択をする機会は多くあるため、中学生のうちから準備しておかないと、自分の望む通りのライフデザインを描き続けられない、と指摘しています。

 

本来ならば、男性も女性と同じく結婚や、パートナーの妊娠・出産を機に自分のライフデザインを変更しなければなりません。しかし男性は女性と違い、年齢によるタイムリミットがありません。そのため実際は、男性がライフデザインを変更することはほとんどなく、女性への妊娠・出産・子育ての負担が大きくなってしまっています。

 

現時点での日本では、男性はマイペースにキャリアを積むことができますが、女性はその性的な事情から年齢によるタイムリミットによって、十分な余裕もなく人生の選択を迫られています。

 

世界経済フォーラムが毎年発表している「The Global Gender Gap Report(世界男女格差報告書)」の2017年度版によると、日本は144国中114位に位置し、年々順位を下げていっています。

 

漆紫穂子校長は、これからの日本は女性の社会進出なくしては、社会が立ち行かなくなる一方で、そのためには女性のライフデザインに関する意識改革が必要になってくる、と問題を指摘しています。

 

意識改革を社会人になっていてから行っていては、到底28歳の選択の時には間に合いません。だからこそ、中学校・高校から女子に特化したキャリア教育が必要になってくるのです。

 

女子校が日本の未来を左右する

「28プロジェクト」で得られる効果は、共学校では得られない、という見解を漆紫穂子校長は示しています。その理由として、男女のライフデザインへの考え方や捉え方、それを行う時期の違いにギャップがあることを挙げています。

 

男性は自身の理想に従い柔軟性に富んで壮大なライフデザインを構築するのに対して、女性は現実的に捉えそれを見据えてライフデザイン実現のために行動します。だからこそ、それぞれに合った時期に、適した内容のキャリア教育が必要になってくるのです。

 

共学校でも、男女別に時間を設けてそれぞれのライフデザインを意識させることは可能です。しかし、断続的にライフデザインを考えさせることと、女子校のように横断的にライフデザインを意識させることとでは、キャリア教育の効果は大きく異なるのです。

 

漆紫穂子校長自身は、共学校出身であり、自身の経験を振り返ると女性に特化したキャリア教育や情報を得る機会はなかったとしています。そして、自身や周りの級友たちの人生を考えると、中学校・高校の時代に適したキャリア教育や情報を得る機会があれば、女性としての特長を生かしながらキャリアを積むことができるはずだ、と考えています。

 

これこそが日本に求められている女性の社会進出の仕方であり、これを実現できないならば、日本の未来は危ういのではないか、とも問題提起をしています。

 

サーバント・リーダーシップとは?

各女子校の校長や教員たちは、女性の組織力の強さや女性ならではの特長を活かしたリーダーシップが存在することを多く口にします。このリーダーシップとは、いわゆる「サーバント(奉仕的)・リーダーシップ」と呼ばれるものです。従来のトップダウン式の軍隊的なリーダーシップとは異なります。

 

漆紫穂子校長は、女性の社会進出の武器は、女性特有の組織力の強さである、と考えています。アメリカでの企業の社長に対する調査を例に出し、男性はトップに立ちたいと思い社長になる人が多いが、女性はみんなの役に立ちたい、力になりたいという思いから社長になる人が多いのだ、と説明しています。

 

東京女学院の福原孝明校長は、女子校の生徒たちが人との結びつきを豊かにして組織を作り上げていく様子を「インクルーシブ(包括的)・リーダーシップ」と表現しています。

 

白百合の田畑教諭は、競争の時代だった20世紀とは違い、21世紀は共生の時代であるため、男性的なリーダーシップではなく、女性的な柔らかさやしなやかさを活かす時代だ、と表明しています。

 

「サーバント・リーダーシップ」とは、新しい時代に必要とされているリーダーシップの形であると言えます。このリーダーシップは鴎友の大内教諭を始め、複数の教員が口にした「女子は横の連絡が上手」「組織力がある」ということとも結びつきます。

 

クラーク横浜青葉キャンパスの三浦校長は、男子は人を引っ張っていくことが好きだが、女子は横のつながりを大事にして皆で手を取り合って支えていくことが好きだ、と指摘しています。また自立した女性の強い生き方として、生徒たちには、社会の中で自分たちの支え合う力を発揮する方法を見つけていってほしいという願いを口にしています。

 

「共感」によるチーム作り

男性と女性のリーダーシップの違い、組織編成の違いを考えていくと、一つ面白い現象が見えてきます。それは男子校や共学校と、女子校との体育祭でのチーム編成の仕方の違いです。

 

学校の体育祭行事では、通常学年の縦割りによるチーム編成をすることがとても多いです。しかし、女子校では学年ごとの横割りでチーム編成が行われるのが少なくありません。中高一貫校などであれば、中学一年生と高校三年生が競い合ったりします。共学校ではあることなのかもしれませんが、男子校ではこのような例を聞いたことはありません。

 

このチーム編成の違いの理由は、明確には分かりませんが、女子の組織の作り方の特長をふまえるならば納得のいくことが多くあります。

 

男子は命令系統がはっきりしている、軍隊的なリーダーシップと、そこから広がっていくようなトップダウン型の組織編成を好みます。一方で女子はお互いがお互いを支え合うような、サーバント・リーダーシップを求め、横のつながりを大事にした組織編成を好みます。男子は「命令」、女子は「共感」を軸にそれぞれが組織を作り上げているのです。

 

だからこそ、少なくとも女子校では縦割りではなく横割りのチーム編成で、体育祭を行うようになったのではないか、と考えることができます。

 

学年対抗で体育祭を行えば、もちろん高学年の方が勝負は有利になります。それでも学年対抗の体育祭が続いていくのはきっと、勝負の勝ち負けよりも、チームワークや勝負に共に挑んだという思い出を大事にする、女子の特性が活かされているからでしょう。

 

この件に関しては、横浜雙葉の千葉拓司校長も、女子はただ勝つだけでなく、仲間で勝つことを目的にしているようだ、と述べています。

 

一般的になんとなく「女性らしい」と思われていた特長も、一度女子校という特殊な環境に立って考えてみるとあらゆる場面で活かされています。またそのような環境に女子生徒たちが身を置くことで、生徒たちの個性は日々磨かれていき、まさに好循環が生まれているのです。

 

女性が日本の硬直を和らげる

トップダウン型の軍隊的なリーダーシップと、サーバント・リーダーシップのどちらか一方が明らかに優れていることはありません。時代によっては、従来の軍隊的なリーダーシップの方が求められることもあるでしょう。

 

しかし、現代の日本で必要なのは従来の軍隊的なリーダーシップではなく、女性的な「やわらかさ」をもつサーバント・リーダーシップです。

 

現代の日本は軍隊的なリーダーシップによって構築された、トップダウン型の組織編成により硬直状態にあります。価値観や制度ががちがちに硬直してしまっていることが、今の日本の解決すべき構造的な問題なのです。

 

硬直してしまったものに、さらに硬いハンマーを振りかざせば、振りかざされた方は木っ端みじんに砕け散ってしまいます。そして砕け散ったあともその破片は硬いまま残ってしまいます。

 

今の日本もがちがちに硬直した状態です。この状態の日本を改善しようと、更に軍隊的なリーダーシップを振りかざし続けると、日本自体が砕け散ってしまう恐れさえあります。

 

硬直したものの形を変えたければ、それは一度その硬直を内側からじわじわと溶かし、形を変えていくしかありません。このような発想の転換こそが、時代や政治の変換機にはとても重要になってくるのです。

 

サーバント・リーダーシップには、がちがちに硬直した日本を内側から溶かし、作り変えてしまえる可能性が秘められています。そしてこのサーバント・リーダーシップの可能性を広げるものこそが、他でもない女子校での「教育」なのです。

 

品川女子学院の「28プロジェクト」のようなキャリア教育を女子校で受け、中学校・高校生のうちから自らの「女性」に対して意識を高める癖をつけ、日本社会に今もなお残るジェンダー・ステレオタイプを本当の意味で取り払うことが重要です。

 

このような教育によって、自由な発想を得た女性たちが、どれだけ社会に進出してこられるのか、が日本の変革の鍵となるのです。

 

女子校での教育を考えるたびに、女性たちの「やわらかさ」や「しなやかさ」こそが、今の日本のがちがちに硬直した社会を内側からじわじわと温め溶かしてくれる役割を担ってくれるのではないか、と期待が膨らんでいくのです。

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