子どもの責任感を育むために注意したいこと
最近では小さいころから習いごとをしている子どもが増えてきていますが、複数の習いごとをかけもちしたりして毎日ものすごく忙しい思いをしているような子どもがけっこういます。このようにしていくつもいくつも習いごとなどをすることで何か問題は生じないのでしょうか。
最近の子どもはとても忙しい
仕事などで手帳を準備しそこに毎日のスケジュール管理をしている人は多いかと思います。今の親の世代の場合、こうした行動を取るようになったのは早くても17~18歳、人によっては会社勤めを始めてから、というような場合もあるかもしれません。それより若いころにはせいぜいカレンダーの余白をちょっと使って覚え書きをする程度で、毎日スケジュールをきちんと把握するといったような経験をしていた人はいないのではないかと思います。
一方最近の事情を見てみると、小学校に通っているぐらいの子どもであっても何らかの形でスケジュールを把握しておかねばならないほどにたくさんのことをしなくてはならないようになっています。一日の大部分を学校で送った後には毎日何かしらの習いごとであったり学習塾に行く時間があり、今日は何もすることがない、というような日はほとんどない、といったようなケースがそこかしこに見受けられます。
また習いごとに行くだけではなく、学校の授業内容の予習をしたり、宿題を片づけたり、復習をしたりしなければなりません。もし習いごとが家での練習を要するようなものであった場合、それに加えて練習もする必要があります。
大きな会社の社長さんのように、ほとんど分単位で毎日やることが決まっているような子どももけっこういます。友だちと遊ぶ日を決めるために、手帳を見て空きのある日時を調べて予定に入れておく、というような子どもすらいる始末です。
このように毎日忙しくスケジュールがぎっしりいっぱいであったとしても、そこはまだ子どものことですから毎日忘れずきちんと管理することなど難しいでしょう。予定を忘れてしまった、などということもあるかもしれません。
そこで、たいていの場合こういった子どもを持つ親は子どもの予定がきちんとこなせるように指図をしなければならなくなります。宿題は終わったのか、塾に行くための準備はしたか、習いごとに行く時間の指示など、毎日子どもをせき立てて予定通りに日々を送らせることが親の役割だという家庭も多いのではないでしょうか。
スケジュール通りに行動させるのは親がいちいち指示を出すことでなんとかやらせることができるかもしれませんが、子どもがものごとを処理する能力まで肩代わりしてやることはできません。そして子どもは子どもですから、そういった能力には自ずと限界が現れます。このため、スケジュール通りの時間であらゆることをきちんとやり遂げることができるような子どもはほとんどいないとみていいと思います。
こうして、多くの親が悩ましく思うこと、塾に行かなければいけないのに子どもの身支度が終わっていない、塾の課題をしなければならないのに学校の宿題が終わっていない、明日の登校の準備をしなければならないのに宿題が終わっていない、といったようなことが起こることになります。
こういうケースでは、多くの親が「宿題は後回しにして、とりあえず塾に出かけなさい」であるとか、「バイオリンの練習はそれぐらいにして、先にお風呂に入っちゃって」といったように、スケジュールをこなすことを優先して、今やっていることが途中になってもいいから次のことを始めなさい、と指示するといったことをやりがちです。
子どもも人間ですし、気分や体調などによってうまくいかない日もあります。普段は問題なくできていたことも、別の日にはうまくいかず、それで時間をオーバーしてしまうことだってあるでしょう。しかしそういった事情にお構いなく、時間は時間ということで強引に区切りを設けて今やっていることを終わりにさせてしまっていると、のちのち問題が起こってきます。
スケジュール通り厳密にやらせている、というと聞こえはいいのですが、実際これはものごとを中途半端にするように教えているようなものです。なんでもかんでもぜんぶ手をつけようと思ったら、得てしてすべてが中途半端になってしまうものです。親はスケジュールを厳守させるよりも、こうした事実にもっと目を向けるべきではないかと考えます。
こういったことが連続すると、子どもはそのうちに、とりあえず手をつけてやった形だけ作れば、時間切れになってしまっても終わりになるからいいんだ、といったような間違った考え方をするようになりかねません。そしてそうした考え方がさらに悪い方に進むと、別に何かを完成させることができなくても、とりあえず手さえつければ許されるという甘えを持つに至り、一つのことができあがるまで終わらせる、という責任ある考え方ができなくなってしまうかもしれません。
一度始めたことは最後までやれる子どもに育てよう
世間を見渡すと、自分が始めたことを最後まできちんと終わらせる能力や責任感といったものが欠けている大人というのは結構見つかります。こうした人はいつも数多くのタスクを抱えているため、ぱっと見には能力の高い人に見えますが、実際にはそうしたタスクのほとんどを中途半端にしてしまい、それで問題ないと考えるようないい加減な人物です。
こういった人物はどんなことでもあっさり引き受けます。自信たっぷりに引き受けるだけ引き受けて、できあがったものをみると中途半端だったり手抜きが丸わかりだったりします。こんな人を相手にして仕事をしたいと思う人がいるでしょうか? 自分の子どもがそんな大人になって欲しいという親はいないと思います。ですから、中途半端を強制するようなことをしてはいけないのです。
社会で成功を収めらたければ、地味なものごとであっても一度始めたことであればきちんと終わるまでやり遂げる能力や意志を持つことがどうしても必要です。そしてそういったものは一朝一夕で身につくものではなく、子どものころから時間をかけて育てる必要があるのです。
では具体的にどのようにすればそうした力が身につくのかですが、子どもがやり切れないほどの課題を課さないことに尽きます。例えば、今日は模試で間違ったところをやり直してみる、と決めたのであれば、それをきちんとやり遂げさせるのです。
考えていたよりも仮に早くできあがった場合でも、時間があまったからこれも、というようにやることを増やさないことが重要です。むしろ早くやれたことを褒めてあげて、増やしたかった課題は次の日にやらせることにして自由時間をあげて下さい。そうすれば、子どもは作業の効率を上げるためにさまざまな工夫をしたり集中して取り組んだりするようにもなりますし、一度始めたことをやり遂げるという態度も身についていきます。
20世紀最大の経営学者の1人にドラッカーという人物がいますが、彼も以下のようなことを述べています。
「成果をあげる秘訣を一つだけあげるならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない」
つまり、優秀だから多くのことをこなせるわけではなく、1つのことに集中してやり遂げていくのが優秀な人の特徴ということです。その結果(その積み上げで)、多くのことをこなせたということは多々あることでしょう。
更新日:2019/11/29|公開日:2015/12/01|タグ:責任感