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子どもがひきこもりになってしまったら

ひきこもり

厚労省の平成18年の調査によれば、ひきこもりの子どもがいる家庭は日本全国で26万世帯にもなるとされています。ひきこもりとはどういった状態で、なぜ起きてしまうのでしょうか。

 

二次的な障害をひきおこすこともあるひきこもり

厳しい両親のもとで育ったある中学生は、友人がらみの問題が起きて学校を休んだ際に両親から迷惑そうな反応をされて傷つき、それが元でひきこもりになってしまいました。本人の手記によれば、学校に行かねばならないと思いつつも、両親を困らせることに喜ぶ自分を自覚したといいます。

 

一口に「ひきこもり」と言っても、その内部にはいろいろなパターンが存在します。完全に自分の部屋に閉じこもってしまっているようなケースの他、近所であれば買い物ぐらいには行けたり、昼夜逆転の生活をしている場合もあれば、生活リズムにも部屋の整頓も特に問題はなかったりといった具合です。

 

ひきこもりの子どもたちに共通しているのは社会参加ができないということですが、何が原因となったのかという点についてはいじめによるもの、友だちや両親との関係などさまざまでひとくくりにはできません。

 

ひきこもりは特別な子どもにだけ起きる特殊な症状というわけではありません。子どもが心身ともに急成長する思春期には誰もがなりうるものです。その背景には多様化する家庭環境、親と子どもの関係、子どもの性格といったものがあり、それとともに自立心や自己像を確立する際に戸惑ったり、子どもをとりまく人間関係が複雑になるために引き起こされます。

 

ひきこもりは大きく4つの種類に分類することができます。過剰適応型、受動型、衝動統制未熟型、混合型の4つです。

 

このうち過剰適応型はひきこもりの子どもの約50%を占めるもので、子どもの性格的には自尊心が高く、精神的に背伸びをしがちなところがあります。こうした子どもは自分がうまくやっているところしか見られたくないと思っており、そのためちょっとした失敗を周囲からからかわれただけでひきこもりになってしまうこともあります。

 

受動型の子どもの場合は消極性が目立つ性格をしているために周りの人間や状況に圧倒されてしまうことによってひきこもりになってしまいます。対人恐怖を起こすことも多いようです。衝動統制未熟型の場合は空気を読むことが苦手で、クラスなどで浮き上がってしまって孤立していくというプロセスを辿ります。

 

このように、ひきこもりといってもまったく違う性格傾向があるため、解消するためにも違ったアプローチが必要です。たとえば、過剰適応型の場合は子どもが自分自身をありのままで受け入れることができるように指導する必要がありますし、受動型の子どもには容易に達成できる課題に取り組ませるところから始めて自信を持たせるようにする必要があります。

 

ひきこもりは早めに解消しないと二次的な障害――強迫性障害やうつ病、敏感関係妄想や家庭内での暴力といったもの――の原因になってしまうこともあるので、過去の事例を参考にしてなるべく早めに解消することが大切になってきます。

 

ひきこもりにどう対処すればいいのか

周囲の社会との接触を回避するような十代の子どもたちを「思春期型閉じこもり」ということがあります。これは、自分の家や部屋にひきこもってしまうという行動よりも、社会に対して心を閉ざしてしまうほうが問題だからです。そうした子どもは精神的ストレスを過剰に抱え込んでいたりすることがあるといいます。

 

こういった子どもたちが社会に復帰するには、やはり親がその子どもを理解して支えるということが大事になってきます。そうした子どもたちの多くは自分には価値がないと感じており、親や社会から自分は見捨てられるのではないかという感情と常に葛藤しているからです。

 

子どもがこういった悩みを抱えているときに、それを甘えだとか反抗的だとかいったように親が切り捨ててしまったのでは子どもの状態は良くなりません。親は自分の価値観を脇に置き、子どもの言い分を感性のみで聞くようにすることが大切なのです。

 

とはいえ、子どもを心配するあまり、たとえばこの子の味方になるのはこの世では自分だけだ、などといったように母親がそうした子どもと不健康な結びつきを構築してしまうようなことがあると、今度はそれを解消するのが非常に難しくなります。思春期の子どもの心は複雑ですから、間違ってもそうならないように親の側も注意をせねばなりません。

 

ひきこもりの子どもに対する社会的なサポート体制は

自治体の中には、ひきこもりに悩んでいる子どもたちをサポートするところもみられ始めています。大阪の堺市では、平成15年にティーンズナビという施設を立ち上げました。これは不登校やひきこもりの児童をサポートする全国でも珍しい施設で、中学校卒業から18歳までの子どもたちが入所し、寮生活を行っています。

 

ティーンズナビでは子どもたちの興味や将来の希望に合わせて、勉強やスポーツ、職業訓練などを通して自立と社会への復帰とを促しています。ティーンズナビでは部屋に閉じこもりにくくするために2人部屋制をとっているほか、外出することも許可し、子どもたちが社会と接触するための機会を緩やかに保っています。

 

ティーンズナビでは、自習室で数人の子どもたちが互いに教え合いながら勉強をしている姿が見られたり、職員と野球をしたり、就職の面接のために履歴書を作ったりする姿が見られます。この施設に自分の意思で入ろうと思った時点がすでに社会への復帰のスタートとなっており、だいたいの子どもが入所から1年で退所していくといいます。

 

国立精神・神経センターの調査によれば、思春期に発生したひきこもりや不登校はそれらがすべて長期化するわけではないということが分かっています。調査対象のうち73%については、中学校を卒業してから10年目ぐらいには社会で安定的な生活を送っているという調査結果が出たのです。

 

調査の対象になった子どもたちのうちおよそ50%は会社勤めができており、残りのうち約20%がアルバイト、10%弱が学生、5%程度が専業主婦になっていることが分かりました。ニートになってしまった子どもは18%程度で、このことは若いころに不登校を経験した子どもの多くがひきこもりになる、という考え方が必ずしも正しくないということを示しています。

 

中学校卒業までに家庭での暴力が見られたり、抑鬱や妄想といった症状が見られたような子どもの場合、不適応になってしまう確率が高いという結果も出ています。

 

厚労省に設けられているひきこもり研究班も、より若い段階から対策をすることができないかという点に着目した研究を行っていくとしています。

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