知っていますか?脂質との正しい付き合い方
ダイエットのために脂質を控える人は少なくありません。油なんて健康の敵と感じている人も多いでしょう。しかし、それは正確に言うと違います。油にもいろいろありますし、健康な体作りには欠かせないものなのです。もっと詳しく油を知ってみませんか?
脂質は体にとって必要不可欠なもの
油と言っても、いろいろなものがあります。まず、常温で液体状になっている「油」と、固体状になっている「脂」とがあります。この2つと、さらに脂肪酸、グリセリン、コレステロールなどをすべて含めたものが「脂質」です。脂質は炭水化物、たんぱく質と並んで三大栄養素の一つです。
日本では食の欧米化が進み、それと同時に脂質摂取量が増加しています。これは肥満の原因にもなっているため、ダイエットのために油脂類はほとんど摂らないという人もいます。
確かに脂質は高カロリーです。糖質やたんぱく質は1gあたり4キロカロリーなのに比べ、脂質は9キロカロリーです。しかし、脂質のカロリーは主に心臓を動かすためのエネルギーとして使われています。カロリーが高いからと、脂質を全く摂らないわけにはいきません。
それに脂質は、ホルモンや細胞膜を作る必須脂肪酸を含んでいます。これは体内で生成することのできない成分なので、食べ物として口から摂取する必要があります。また、脂溶性ビタミンであるビタミンA、D、E、Kなどを体内に吸収し貯蔵する働き、神経伝達をスムーズにさせる働きもあります。必須脂肪酸は私たちの体を元気に動かすために必要不可欠な栄養素なのです。
脂質不足が深刻になると、発達障害の原因になったり、皮膚炎を引き起こしたり、免疫力を弱らせたりするため、健康な体を維持することができません。脂質の摂り過ぎは体によくありませんが、摂らなすぎも同じく体に悪影響をもたらします。
体が1日に必要とするエネルギーの20%~25%というのが、脂質を摂る時の目安です。良質な脂質を選び、毎日適切な量を摂りましょう。
動物性よりも植物性の油脂が良いとは言えない
バターなどの動物性の油脂よりもオリーブ油などの植物性の油脂の方が体に良いと思っていませんか?ここにも少々誤解があります。
脂質は大きく2つに分けられます。その2つとは飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸です。飽和脂肪酸を多く含む食品は肉や乳製品、ココナッツ油、牛脂、ラードなどです。飽和脂肪酸は体温を一定に保つ働きや、血液に粘性を持たせる働きがありますので、体には欠かすことのできない栄養素です。
しかし、飽和脂肪酸の摂り過ぎはコレステロールを高めたり、中性脂肪を増やしたりしてしまい、血液の流れを滞らせる原因になってしまいます。それがもとで高脂血症とも呼ばれる脂質異常症を招いたり、脳梗塞や心筋梗塞、動脈硬化を引き起こしたりもします。飽和脂肪酸の摂り過ぎには十分気を付けましょう。
一方不飽和脂肪酸は、さらに2種類に分けることができます。一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の2つです。一価不飽和脂肪酸はオレイン酸が代表的なものです。一家不飽和脂肪酸を多く含む食品としてはオリーブオイル、ナッツ類、バターなどが挙げられます。
一価不飽和脂肪酸の特徴としては、悪玉コレステロールを増やさずに善玉コレステロールのみを増やすことができるという点があります。一価不飽和脂肪酸が足りなくなると、悪玉コレステロールが増えてしまいます。そうなると、動脈硬化や生活習慣病を引き起こしかねません。
一価不飽和脂肪酸よりも多価不飽和脂肪酸の方が、悪玉コレステロールを減らす働きが強いですが、一価不飽和脂肪酸は酸化しにくいという良さがあります。(酸化のデメリットについては後述)
さて、多価不飽和脂肪酸にはリノール酸(n-6系必須脂肪酸)、リノレン酸(n-3系必須脂肪酸)、DHA、EPAがあります。リノール酸を多く含むものとしては紅花油や大豆油、コーン油などがあります。リノレン酸は菜種油、DHAやEPAは魚油に多く含まれます。これらの多価不飽和脂肪酸には、コレステロールを低下させたり中性脂肪を減らしたりする働きがあります。
以前は、リノール酸は体によいと言われていましたが、過剰に摂取すると悪玉コレステロールだけでなく善玉コレステロールも減らしてしまうというのが、最近の常識です。
多価不飽和脂肪酸のデメリットとして、酸化しやすいという点が挙げられます。特に酸化しやすいのはリノレン酸です。酸化してしまった不飽和脂肪酸は体に害をもたらす過酸化脂質というものになります。これは細胞にダメージを与え、老化を促進させたり生活習慣病を引き起こしたりします。
このように、脂質にもいろいろなものがあり、それぞれ違ったメリットとデメリットを持ちます。ですから、健康な体作りをするなら、「使う油はオリーブオイルだけ」などと偏らず、肉類や魚類、植物油をバランスよく取り入れて、適量を摂取するようにするのが一番よい方法だということが言えるでしょう。
目安としては「飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸=3:3:4」の割合でバランス良く摂取するのが良いとされています。
更新日:2019/11/29|公開日:2017/03/05|タグ:脂質