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子どもを受験産業の犠牲者にしないために

受験

最近の子どもたちは中学校でも私立校を受験するなど、小さいころからかなり忙しく勉強をしています。そうやってハードなスケジュールをこなす中で、「壊れて」しまう子どもたちも見られるようになってきています。自分の子どもが「壊れる」ことなく、しかし学力を上げるためにはどうすればいいのでしょうか。

 

大人顔負けのハードスケジュールをこなす子どもたち

親の年齢にもよりますが、現在子どもを持っている親の世代に小学生のころの話を聞いたときに、家の仕事や家事の手伝い、小さな弟妹の世話などで忙しくろくに遊べなかった、などという経験をしている人はごく少数かと思います。学校から帰るやカバンを放り出して遊びに出かけてしまい、許される時間いっぱいまで遊び回っていた、というようなケースも多いかと思います。

 

そんな親の世代に対し、現在の子どもたちの様子はどうでしょうか。親世代の場合と同じで、小学校から帰ってくるとすぐに遊びに出てしまうようなことはないのではないでしょうか。学校から帰ってカバンを置いたら塾や習いごとに行かなければならないのではないでしょうか。

 

塾に行ったり習いごとをしている子どもたちは最近ではますます増えてきています。時間に追われるようにして小学校から帰ってきて、軽く食事をした後で電車で塾に出かけ、もう暗くなってきてから家に帰ってきます。そして急いで夜ご飯をとったあとは寝るまでまた勉強に追われるといった具合です。

 

こうしてみると、現代の子どもたちは大人も顔負けのハードスケジュールをこなしているといえるのではないでしょうか。そうでないケースもありますが、そういった場合にはたいてい家の中でTVゲームにふけっていて、外で体を動かして遊ぶということをする子どもは少なくなっています。

 

このように、自分が送った子ども時代とはまるっきり違う子ども時代を自分の子どもが送っているということについて、親の世代はどう感じているのでしょうか。

 

受験産業の裏側を知っておく

進学率のいい私立のいい学校に入れるには、小学生でも塾に通わせないといけない、といったような考え方をしている親は多いようです。しかし、特に男の子の場合はただ勉強だけをしていても学習能力は伸びません。自然とふれあい友だち同士でかけまわって遊ぶことも大事なのですが、塾や習いごとをしていれば当然ながらそんな時間はありません。

 

よく、受験で子どもが壊れる、などと言ったりします。そのように聞くと、受験がうまくいかず志望校に入れなかったせいで……と考えがちですが、実際のところはそうではありません。だからいい進学塾に入れて合格させなくては、というわけではないのです。それよりも、厳しい勉強によって遊んだりする時間がなく、それによって他人とやりとりする能力や趣味のように人生を謳歌するためのものを見つけられずに人としてダメになってしまうケースの方が多いのです。

 

厳しい受験勉強を経る中で壊れてしまった子どものケースを見ると、親が受験産業にのめりこんでしまっている場合がかなり多く見られます。優秀であるとして名前を知られているような進学塾に入れ込み、自分の子どもをそこに通わせさえすればもう大丈夫だと思い込んでいるケースが多いのです。実際、そういった進学塾は有名であり、CMなどを目にする機会も多く、高い進学率でも知られているのでそんなふうに思い込んでしまうのかもしれません。しかしそういった考え方は大事な視点を見失った危険な考え方です。

 

たいていの場合、よく知られた塾のCMなどでは、有名校に何人合格を出したといったような数字が踊り、その進学率の高さをいうことが多いものです。自分の子どもが将来どうなるかを毎日悩んでしまっている親にとっては確かにかなりの訴求力があるものなのかもしれません。しかしここできちんと認識しておかねばならないのは、これはあくまでCMにおける物言いだということです。

 

CMにおける言い方というものはうまくできているもので、けっして嘘ではないものの、そんなに甘くない現実が隠されているようなことが往々にしてあります。

 

たとえば、これを使えば痩せる! といったようなダイエットのCMなどには、その商品を使ったことで数十kgも痩せた、といった人の体験談が載せられていたりします。確かにその商品は使っているのかもしれませんが、実際にはたいへんなカロリー制限や運動といったこともしているはずです。つまり、その商品をただ使っているだけの人でそこまで痩せられなかった人が背後に何十人、何百人といるものなのです。

 

こういったCMのマジックは進学塾の場合でも同じです。CMでのうたい文句通り、優秀な学校に進学できた子どもは確かにいるでしょう。しかし、そうした子どもたちはその進学塾でだけ勉強していたわけではありません。塾以外の場面でもたいへんな勉強をしていたはずです。また、そうした合格者の裏にはそれ以上の不合格者の存在があるという点も見落としてはならないと思います。

 

しかし、こうしたCMを真に受けた親たちは子どもをそうした塾に通わせ、そうした塾での勉強から振り落とされることのないように子どもたちをさらなる詰め込み学習へと追い立ててしまいがちです。

 

学習塾が求めているものが何なのかを勘違いしている親がたくさんいるのも事実です。学習塾は慈善事業ではありませんし、公的機関でもありません。それは営利企業の1つであり、入塾している子どもたちの学力向上を第一の目的にしている存在ではありません。営利企業である以上、利益の最大化が第一の目的なのです。少子化の影響により、特に近年、淘汰・買収など業界再編が進んでおり、この傾向が顕著なのは周知のところです。

※以降、塾に関する極端な記述をしていますが、塾をどうこう言うものではなく、利益の最大化のみを目的とした場合、塾はどうなるかを分かりやすさ優先で極端に記述しています。1つの考えとして、そのような視点で読み進めていただければ幸いです。

 

第一の目的である利益の最大化を図るために、塾に入る子どもの数をより多くすること、そしてそのための方策として、入学が難しい有名校に一人でも多くの合格者を出すという戦略を採るわけです。大事なのは顧客である親子にここに入れば合格できると思わせることであって、個人個人の学力に見合った指導をすることではありません。物理的に塾という形態ではできませんし、やってしまうと赤字になりかねません。

 

つまり、塾に通っている子どもすべての学力向上を目指すのではなく、とりたててできる子どもだけにターゲットを絞っているわけです。そういった子どもには有名校に合格できるようなスキルを身につけさせます。そうした子どもたちは企業の利益に貢献してくれるからです。

 

そしてそれ以外の子どもたちは、そうした優秀な子どもの邪魔にならないように区分けするわけです。よくある「成績別」のクラス編成というのはそういうことです。利益を効果的に上げるための方法なのです。

 

受験に勝利するために有名な塾に通い、成績別のクラス編成でより上のクラスに行くために子どもが壊れてしまいかねないほどの勉強を幼いころからさせることにどれほどの意味があるのでしょうか。たしかにそうした苦労をしたことで、うまく有名校に合格できるかもしれません。しかしそれによって子どもが支払う代償はかなり大きなものになります。日々ひたすら知識を暗記することを繰り返し、幅広い経験を積むための機会や感受性を磨く機会を奪われることになるのです。

 

その結果できあがるのは、勉強は得意だがつきあっていても楽しくない人、あるいは、頭はいいが他人の気持ちが分からない人、といったような大人です。自分の子どもがそんなふうに育って欲しい親はいないと思います。

※前述の通り、利益の最大化という塾の第一目的のみにフォーマスして記述したことを再度言及しておきます。現実的には、1つの目的のみで活動することは考えにくいので、特に現場講師陣はバランスを取っています。

 

中学校に入るために受験をすることそのものを否定するわけではありませんが、受験のために時間をかけて有名な塾に通うとまでなるとどうかと思わざるを得ません。子どもを塾に通わせるのであれば、有名校への合格率の高さよりも塾に通うためにかかる時間を念頭に置く必要があると考えます。

 

遠方の塾に時間をかけて通って子どもの大事な時間を浪費するよりも、その時間で他の友だちといっしょに遊んで過ごす方が、結果としてその子どもの学力向上に役立ちとも考えられます。こうした見方を頭に置いた上で、特に中学校の受験については子どもの時間をむやみに奪わないようなことを心がけることが必要と思います。

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