授業中にトイレに行きたくなる子をどうするか
小学校の中でも学年が低いほど、授業中にトイレに行きたくなってしまう子どもがいるものです。担任の先生は、この問題についてどう対応することにするか、きちんと決めておかなければなりません。また、保護者の方々との連携も必要です。授業中にトイレに行きたくなる子にどう対応したらよいか、考えてみましょう。
担任の先生は学校でトイレに行くときの約束事を決めよう
授業中に尿意が来ないようにするには、基本的なことではありますが、休み時間のうちにトイレに行っておくことです。それを約束事としてしっかりと子どもに伝えなければなりません。
授業を中断してトイレに行ってしまっては、その間の内容が分からずに後で自分が困ることになります。時には班の友達やクラス全体を待たせてしまうこともありますから、その時には多くの子どもたちが困ることになってしまいます。
授業というのは、子どもにとって集中しなければならない場面です。スポーツ選手にとっては試合であり、演奏家にとってはコンサートの本番です。スポーツ選手は試合の途中でトイレに行ったりしませんし、演奏家だって演奏を中断してトイレに行くわけがありません。だから、授業中にトイレに行かなくていいようにその前に用を済ませる必要があるのです。
このような例をあげて、休み時間にトイレに行っておく必要性を、子どもに説明しましょう。でも、いくら丁寧に説明しても、授業中に尿意を感じてしまう子どもは必ず出てきます。休み時間にトイレに行くのを忘れてしまったためとか、出そうになかったから行かなかったのに授業が始まったら突然尿意が襲ってきたとか、理由はいろいろです。
大人でもそうですが、気候やその日飲んだもの、その日の体調などによって、トイレのタイミングは違ってくるもの。だから、授業中にトイレに行きたくなっても仕方がない場合も確かにあるのです。その時には、むやみに注意するわけにもいきません。
しかし、今目の前にいる子どもが、その仕方がない場合に当てはまるのか、それともただ単に休み時間に遊びほうけていたためにトイレに行きたくなっているのかは、なかなか判断がつかないもの。だからここでも、担任としてどう対応するかを決めておく必要があります。
まず、だれがどう見てももう出てしまいそうだと、表情や様子でわかったなら、今すぐに生かせましょう。また、これは一つのアイデアですが「トイレに行かせてください」と授業中に子どもが申し出てきたら、「○分になるまで我慢できそうですか?」と聞いてみるのです。一定時間我慢できそうなら我慢させ、その後再び申し出てきたら行かせるのです。
ただし、我慢している時に「やっぱりだめだ」と思った時には行ってもいいことを、きちんと言っておきましょう。我慢できそうだと思ったけどやっぱり無理だ、ということも当然あるからです。また、始めから我慢できないと子どもが言った時には、その場ですぐに行かせましょう。
要は、授業中にトイレに行きたいという子どもたちの言葉を、ただ受け止めて、すぐに行かせるだけでは教育的にはだめだということです。
授業前に行っておくべきだということ、行きたくなったら申し出て、先生の言う通りに待てそうなら少し我慢すること、その途中に漏れそうになったらすぐに行くこと、我慢できないほど緊迫した状況ならそう言って行かせてもらうこと。これらを子どもたちにしっかりと伝えておくのです。
そうしないと、それぞれがそれぞれのペースでトイレに行きたがり、授業が進まないからです。みんなが自分勝手に席を立ってしまっては、授業は成り立たないのです。
就学前に家庭でやっておきたいトイレのしつけ
学校では、授業と授業の間に、必ず休み時間があります。この時間にトイレに行っておけば、たいていは授業中に尿意は来ないものです。しかし、これがなかなかできない子どもがいます。
ですから、就学前には、何かを始める前には必ずトイレに行くという習慣を、家庭でもつけておきたいものです。就学前だけでなく、学校に入ってからもそのしつけは繰り返し行うべきでしょう。
食事の前に、登校前に、遊びに行く前に、ドライブ前に…。これから何かに取り組むとか、何かが始まるとかいう時の前に、必ずトイレに誘うのです。特に遊びに行く前だと、子どもは早くいきたいものですから、「今は出ないから大丈夫」などと言って行きたがらないかもしれませんが、それを鵜呑みにしてはいけません。「でも一応行っておいで」と声をかけてください。
それを繰り返すことで、「これから一定時間はトイレに行くことができない」という時には必ず事前にトイレを済ませておく、ということが自然と身に付くようになるのです。見通しを持った行動ができるようにもなるでしょう。
授業中のトイレについて配慮が必要な子もいる
授業中に自由にトイレに行っていいことになれば、授業が成立しなくなります。また、長時間トイレに行けなくなる前に用を足しておくという習慣もつきません。だから、休み時間には必ずトイレに行くことや、トイレに行きたくなっても我慢できるなら我慢し、どうしてもだめな時には行くということを、約束事として徹底させる必要があります。
とはいえ、この約束事ではうまくいかない子もいるということも知っておかなければなりません。子どもたちの中には、特別トイレが近い子どもや、進んで「トイレに行かせてください」とどうしても言えない子どももいるのです。そういう子どもには、上記の約束事だけでは足りません。
まずは、特別トイレが近い子どもについてです。腎臓の病気や膀胱炎などのためにトイレが近くなることがあります。その場合は医療機関で治療を行う必要がありますし、学校ではきちんとそのことを担任の先生が把握し、学校でのトイレについての約束事がその子に合わない場合は無理強いすることはできません。
病気がなくても、精神的なものが要因となってトイレが近くなることもあります。例えば、人前で発言することに緊張したり、授業がよく分からなくて不安になったり、発表会やテストで緊張したりすることによって、ストレスを感じトイレが近くなるということです。
しかも、何かに緊張してトイレが近くなってしまったということを覚えていて、次もそうなるのではないかと思うとまたトイレが近くなるなど、頻尿が繰り返し起こる場合もあるのです。このような子どもに対しても、特別な配慮が必要でしょう。
また、頻尿でなくても、学年が低かったり、おとなしい性格だったり、神経が細かったりする子どもは、トイレに行きたいと思ってもすぐには先生に言い出すことができません。そうなると、苦しい思いをするばかりか、その場で漏らしてしまうという失敗につながることもあります。そんな経験が元になって「またトイレに行きたくなったらどうしよう」という気持ちが働くようになり、トイレが近くなってしまうということもあるのです。
こういう子どもたちは、特別な存在ではありません。実は結構な確率でどのクラスにもいるものなのです。そのような子どもたちには、個別に「行きたくなったら行ってもいいんだよ。人間なんだからトイレに行きたくなって当然だよ。その時には教えてね」としっかりと伝えておきましょう。親御さんからも言っておくとより効果的です。
それと同時に、クラス全体にも確認が必要です。つまり、授業前にトイレには必ず行き、授業中にトイレに行きたくなっても、我慢できそうなら我慢し、我慢できなかったら先生に申し出ていっても良いという約束事を伝えるときに、授業の前にトイレに行っておいたのに、また行きたくなってしまうということは、人間には当然あることだから、心配せずに先生に申し出るように、付け加えておくのです。
トイレが近い子どもは、行きたくなるときっといつもと違う様子を見せます。もじもじするとか、落ち着かない様子になるとか…。そのような子どもについては、常に様子をよく見ておくことが大切です。
また、仮にやっとの思いで担任に「トイレに行かせてください」と言ってきたなら、他の子と同じように、しばらく我慢できるかどうかを聞くことはやめた方がいい場合もあります。なぜなら、こう聞かれた時に「我慢できません」とは言えず、せっかく申し出たのに失敗してしまうこともあるからです。
このようなことは、別にトイレの問題にだけいえることではありません。多くの人間に言える大原則は当然あるけれど、それと同時に個々に応じた約束事も必要だということです。つまり、人によって、場面によって、使い分ける必要があるということです。
トイレが近い子どもに対しては親と教師との連携が必要
子どもたちの中には、心理的な原因から、あるいは病気が原因となって、トイレが非常に近い子どもがいます。そのような子どもには特別な配慮が必要になりますが、そのことに担任の先生がすぐに気付くとは限りません。逆に、学校でいつも接している教師の方が先に気づく場合もあります。
どちらにせよ、早く分かったほうが相手にすぐに連絡し、連携を図る必要があります。トイレが近いという現象は、身体的、あるいは精神的な疾患が背後にある場合もありますから、医療機関で受診しなければならない場合もあります。
そこまでしなくてもよい場合でも、親と教師とが協力して、どう対応していくのかを決めていかなければなりません。要因となっていることをなくす努力をしたり、その子に合った、学校でのトイレの約束事を決めたりする必要があるでしょう。