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中学受験校を選ぶ際のデータの見方

中学受験のデータ

中学受験をする際、数多く存在する私立中学から、受験校を選ばなければなりません。各校の提示する情報や、塾や教育団体のデータを吟味して、我が子にとって「いい学校」を探すことが親の役割です。

 

私立中学のほとんどが中高一貫教育を行っているため、「大学合格実績」も参考にするべきでしょう。また、中学受験の際に必ず見なければならないのが、各中学の偏差値をまとめた「偏差値表」です。これらのデータをどのように見るべきか、また活用すべきか、その際の注意点などをまとめました。

 

東大合格者数が学校選びの指標になる理由

毎年3月になると、週刊誌はこぞって高校の「東大合格者数」を発表します。「学歴よりも実力」と言われる現代社会においてもなお、東大の合格者数が注目されるのはなぜでしょうか。それは、東大合格者数は各高校の進学実績の象徴であり、進学力を見る上で指標になりやすいからです。

 

私大よりも信憑性の高い東大合格者数

私立大学は、日程の幅が広く、1人で何校でも併願することが可能です。例えば、優秀な生徒が1人で5校でも10校でも受験し、合格することができます。合格者人数はのべ人数で発表されるため、実際の進学者数との間に大きな差が出てしまいます。

 

例えば、2017年、筑波大学附属駒場高校(以下、筑駒)の進学実績によると、早稲田大学合格者は87人、慶應義塾大学合格者は80人でした。しかし、実際に進学した生徒数は、それぞれ6人、18人でした。同様に開成高校では、早稲田大学合格者が195人、慶応大学合格者が170人だったものの、進学者数はそれぞれ24人、38人でした。

 

このように、レベルの高い高校ほど、国公立志向が強く、私立大学の辞退者は多くなります。「合格者数より進学者数を見た方がよい」と言われますが、私立大学においては、合格者は多くても進学者は少ないため、学校選びの指標にはなりません。

 

一方、国公立大学では、前期、中期、後期の3回しかチャンスがありません。前期入試で合格し、入学手続きをすれば、中期、後期の受験はできなくなります。したがって、国公立大学の場合は、1人1大学の合格となります。辞退者がいないわけではありませんが、合格者と進学者の間に差は生じにくくなります。

 

例えば、筑駒の2017年、東大合格者は102人、進学者は101人でした。同様に開成は、東大合格者161人、進学者158人でした。私立大学の合格者数より、信憑性が高いため、国公立大学最難関である東大合格者数が、指標として用いられています。

 

真の学力が求められる東大入試

東大の入試問題には、真の学力が求められます。受験勉強で得たテクニックや知識だけでは決して太刀打ちできません。どの教科も記述式の問題が多く、論理的思考や表現力が試されます。英語では、多読や速読の求められる圧倒的な量の長文、配点の高いリスニング問題が出題され、時代に即した使える英語力が必要とされます。

 

東大の入試問題に対応するためには、教師にやらされる勉強をしていては駄目なのです。教師が手とり足とり教えるのではなく、どこかで手を離し、生徒自身が自ら努力しなければ、決して合格することはできません。

 

受験の知識、テクニックだけでなく、論理的思考、表現力、そして高い学習意欲がなければ東大合格は勝ち取れません。したがって、東大合格者数が多い学校は、生徒の自立や自律を促す本質的な教育が行われていると考えられます。

 

ただし、東大に合格するだけの力を持っていながら、東大にない学部や学科を目指す生徒もいます。ランキング上位校ほど、東大にこだわらない生徒が多いのも事実です。飛び抜けて力のある生徒ほど、東大に興味はないという生徒が多くいます。これらの層を除いても、ランキング上位校の優位は変わりません。

 

東大合格者数を見るときの注意点

各高校の東大合格者数を見るときに、注意しなければならない点があります。地域性、景気に左右されること、複数年で見ること、合格割合を考慮すること、週刊誌独自のデータ分析に惑わされないことです。

 

まず、東大合格者数は地域によって差が生じます。東大の受験者は東日本で多く、西日本では比較的少ない傾向にあります。西日本では一定数が京大に流れることに加え、医学部志向が強いことが要因です。

 

2つ目に、東大合格者数は景気に左右されます。地方から東京に進学させるには、学費に加えて、家賃代、生活費など、より多くの費用を親は捻出しなければなりません。景気が良ければ、地方からの進学者が増え、悪くなると首都圏からの進学者が増える傾向にあります。

 

3つ目は、隔年現象を考慮し、複数年で合格者数を見ることです。隔年現象とは、1年おきに合格者数が増減を繰り返す現象のことです。浪人受験率の高い東大では、現役合格が多かった次の年は、浪人合格が少なくなり、現役合格が少なかった次の年は、浪人合格が多くなります。よって、2年ごとに合格者数を見ることが必要になります。

 

4つ目は、合格割合を考慮することです。合格者数が同じ10人であっても、1学年200人の学校と400人の学校では、合格割合は200人の学校の方が高くなります。優秀な生徒を集めるのに限度はあるため、400人の学校の方が2倍有利というわけではありませんが、単に人数だけでなく、割合も考慮する必要があります。

 

最後に、週刊誌独自のデータ分析を見るときの注意点です。週刊誌によっては、各高校の大学合格力ランキングや、入学時と卒業時の偏差値の伸びランキングなどを独自に分析して掲載しているものがあります。

 

大学合格力とは、各高校の各大学の合格者数に、各大学の入試偏差値をかけて合計して求めたものです。各高校の「大学に合格する力」がどれくらいなのかを知ることのできます。私立大学のデータについては、1人で複数校の合格が可能なため、参考程度にしかなりません。

 

しかし、1人1校のみ合格の国公立大学のデータについても、考慮しなければならない点があります。それは、カウントされなかった秀才たちの力です。強気な生徒が多いA校と、冒険しない生徒が多いB校を例に見てみましょう。

 

A校は、強気な生徒が多く、東大を20名が受験しました。合格したのは半分の10名、残りの10名は不合格となり、私立大学に合格し進学しました。一方、冒険しない生徒が多いB校は、東大を15名が受験し、10名が合格、残りの5名は不合格となり、中・後期日程で地元の国公立大学に合格し、進学しました。

 

B校の東大が不合格だった5名は、地元の国公立大学に合格しているため、大学合格力のデータに反映されます。しかし、A校の不合格だった10名は、国公立大学を受験していないため、データには反映されません。その結果、強気な生徒が多いA校より、冒険しない生徒が多いB校の方がランキングでは上位になってしまいます。

 

大学合格力は、高校の一定の力を知ることのできるデータとして有益なものです。しかし、各高校の力全てを表しているものではありません。カウントされなかった秀才たちの力が、隠れていることを考慮する必要があります。

 

メディアが流すデータを鵜呑みにせず、データだけでは測れない学校の価値があることを知っていることが大切です。とはいっても、マスメディアが一定の情報を流すことには価値があります。もしそうでなければ、ネット上によく分からないデータが出回る可能性があります。

 

大学合格実績だけが学校の価値ではありません。各校の歴史、教育方針、卒業生の評判など様々な角度から情報を集めることが必要でしょう。大学合格実績はあくまでも、学校の価値の一部だと捉えるべきなのです。

 

大学受験における塾と学校の役割

大学受験において、塾や予備校の力は看過できません。東大合格者数の上位にランクインする高校の生徒達の、90%以上が塾や予備校に通っているからです。せっかく私立中高一貫校に入学させても、結局の塾かと感じるかもしれません。しかし、学校には学校の、塾には塾の役割があり、双方が噛み合うことで相乗効果が生じるのです。

 

大学受験における塾の役割

中高一貫校の生徒を対象にした学習塾には、老舗が存在します。鉄緑会、SEG、平岡塾などは、東京の老舗中高一貫塾です。大手では、河合塾のMEPLO、代々木ゼミナールとサピックスのY-SAPIXなどが、中高一貫校の現役生を対象に講座を開設しています。

 

もともと、私立の名門校では、受験テクニックはほとんど教えていません。塾や予備校が進出する以前は、卒業生から、お勧めの問題集を教えてもらったり、使い方を聞いたりしていました。現在では、その役割をプロが担うようになったのです。

 

塾に通っている生徒達の多くは、塾と学校の役割を分けて考えています。自主・自律を掲げる名門校には、放任主義の学校が多く、勉強を強制されることはありません。そのため、塾に通うことで、必要な学習量を知り、自らに負荷をかけることができます。塾を学習のペースメーカーとして活用しているのです。

 

大学受験塾にはない学校の魅力

「大学に受かるためだけなら、塾だけでいい」と、塾に通う名門私立校の生徒は言います。塾では、受験テクニックを教わることが可能です。しかし、学校には学校にしかない魅力があります。

 

「学校は将来のことを真剣に考えるきっかけをくれた」、「友達や先生は、魅力的だった」と、卒業生は語ります。名門私立校には、自主・自律を重んじる校風があり、勉強を強制されることは、ほとんどありません。教師の多くは受験勉強だけが教育ではないと考え、より深く本質的な人間教育に焦点を当てています。

 

塾で教わる受験テクニックだけでは、難関大学に進むのは容易ではないでしょう。学校でベースとなる本質的な人間教育が行われているからこそ、塾での受験指導が力を発揮します。伝統と歴史に育まれた本質的な人間教育が、塾にはない学校の魅力です。

 

中学受験における偏差値の活用の方法

中学受験と偏差値は切っても切り離せないものです。偏差値こそが中学受験の悪だと言う人もいますが、偏差値自体が悪いのではなく、活用方法を間違えると悪になり得るのです。使い方を間違わなければ、有益なものです。

 

偏差値とは何か

偏差値とは、「受験者の中で自分がどの辺の位置にいるのか」を知ることができる数値です。成績を表す指標として、順位や点数があります。順位は、受験者数が少なければ上がります。点数は、問題の難易度によって上下します。問題が簡単で平均点が高ければ、自分の点数も上がるはずです。

 

偏差値は、受験者数や問題の難易度に左右されない、「自分の相対的な位置」を示す指標なのです。本来は、受験者個人について表すものでしたが、今では各々の学校について難易度を表す指標になっています。

 

模試を主催する塾や団体は、中学入試が終わると、それまでの模試の結果と各生徒の合否結果を分析します。例えば、ある模試の偏差値が60だった子供達が、80%の確率でA中学に合格していたとします。しかし、偏差値58だと70%まで下がるとします。これらの情報を細かく分析して導き出したのが、「合格率80%の結果偏差値」です。

 

つまり、A中学に80%の確率で合格の可能性がある偏差値ということです。同様に、合格率50%の結果偏差値などが導き出されます。個人について表していた偏差値が、学校につくようになり、それらをまとめたものが偏差値表です。

 

中学受験の模試の種類と偏差値

中学受験の模試には、「4大模試」と呼ばれるものがあります。四谷大塚の「合不合判定テスト」、日能研の「全国公開模試」、首都圏センターの「統一合判」、サピックスの「合格力判定サピックスオープン」です。

 

模試の種類によって、母集団が異なります。首都圏センターの統一合判は、受験者が多く、学力の幅が広いのが特徴です。一方、サピックスの合格力判定サピックスオープンは、難関校を志望する学力上位の子供達が受けるため、受験者数は少なくなります。

 

受験者の母集団が異なることで、模試ごとに平均が変わり、偏差値も変わります。首都圏センターよりも、サピックスの方が、偏差値は5~10低く出ます。2017年の開成高校の「合格率80%の結果偏差値」は、四谷大塚では71、日能研では72、首都圏センターでは78、サピックスでは66となっています。

 

中学受験の偏差値と学校の人気

学校の人気は、常に上下します。大学合格実績、カリキュラムの改訂、校舎や制服のリニューアルなどによって、人気は上がります。人気が出れば、受験生が増え、偏差値は上昇します。逆に、人気がなくなれば、受験生は減り、偏差値は下降します。

 

偏差値が上がるということは、その学校に入る難易度が上がるということです。競争を避けたいと思えば、偏差値の下がった比較的入りやすい学校を選べば、可能性が高まります。

 

しかし、中学受験においては人気がある学校に受験生は殺到します。その結果、人気のある学校はますます人気に、そうでない学校はますます人気がなくなる、二極化が進んでしまいます。

 

各々の塾や団体が、結果偏差値を基に、学校の人気などの様々な要因を分析して、「予想偏差値表」を作成しています。1つだけでなく、できるだけ多くの予想偏差値表を見比べて、受験校を絞り込むことが、全滅のリスクを減らす方法です。

 

中学受験の偏差値と受験日程

首都圏では、毎年、1200回前後の私立中学入試が行われています。首都圏に存在する私立中学は約300校なので、1校平均4回の入試を行っている計算になります。同じ学校の入試でも、それぞれの日程によって、偏差値が異なります。

 

2月1日の午前は、首都圏の入試日のピークで、上位層は男女それぞれの御三家に分散します。しかし、1日の午後、2日、3日は、人気校に上位層が集中します。その結果、御三家よりも、1日午後、2日、3日に入試を行った人気校の方が、偏差値が高くなるという受験日程による偏差値の入れ替えが起こるのです。

※ 男子校の御三家は、「開成」「麻布」「武蔵」、女子の御三家は、「桜蔭」「女子学院」「雙葉」のことを指します。

 

偏差値は、2月1日が最も低く、それ以降は高くなる傾向にあります。各校は、入試日をずらすなどの入試戦略を練り、優秀な生徒をどう獲得するか、考えています。入試戦略に成功し、人気校になった学校もあります。

 

東京と神奈川では、中学入試の開始は、2月1日以降と定められています。しかし、千葉や埼玉ではこのような取決めはなく、1月中に入試が始まります。そこで、首都圏からお試し受験をする受験生が多く、その結果、偏差値が上がり、人気校へなった学校もあります。

 

中学受験の偏差値に惑わされない学校選び

入試戦略で人気校になった学校がある一方で、入試戦略に失敗し、いい学校なのに人気が低迷している学校もあります。学校経営の戦略という点では、出遅れているかもしれませんが、伝統のある堅実な教育を行っている学校もあります。

 

「いい学校だけれども人気がない」、つまり、「いい学校だけれども偏差値が低い」ということは、受験生にとってはチャンスです。このような穴場校をどうやって探すのかが、鍵となります。穴場校の定義は、受験生1人1人によって異なります。我が子にあう穴場校を探さなければなりません。

 

学校の歴史を調べたり、評判を聞いたりすることで、我が子にとっていい学校かどうかを見極めます。その上で、偏差値表を見て、穴場校だと思ったら、実際に足を運んでみるといいでしょう。

 

子供は勉強をすることで、上へ選択肢を広げ、親は穴場校を探すことで、下へ選択肢を広げます。双方の努力があってこそ、中学受験をいい経験にすることができます。

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