不登校や校則違反などの困った行動をとる子供との関わり方とサポートの仕方
不登校や校則違反など、子供の困った行動には、親はとても悩むものです。しかし、親が困った行動の本質を見極めて、子供と向きあっていけば、子供の心に変化が訪れます。今回は、具体的な子供の困った行動を例に挙げて、その時、親がどんな対応をすればよいか見ていきましょう。
親が命令ではなく意見をいう事で、子供はそれを情報として受け取る
もし自分の子供が不登校になってしまったら、親はただうろたえるだけになるかもしれません。また、「なんで学校に行かないんだ」と、強い口調で言ってしまうかもしれません。でも、そこは、できるだけ肯定的に考えて、家庭内で良いコミュニケーションが取れるように努める事が大切です。
これは、親の本音を子供に伝えてはいけないという事ではありません。正直に、「学校に行って、お友達と仲良く過ごしてほしい」「勉強を頑張ってほしい」と、意見として伝えて良いと思います。そうしなければ、逆に子供は不安になります。
自分が不登校になってしまった事を、親が良い事だとは思っていない事は、子供が一番分かっています。それなのに、何をしても親がただ笑っているというのは、子供をますます不安にさせ、親は自分の事を諦めてしまったのだと思い、ますます殻に閉じこもってしまいます。
「学校に行ってほしい」という言葉は、命令ではなくて、親の意見です。学校に行くことが命令口調になると、「あなたは学校に行かなくてはならない」というようになります。それでも、子供は、意見と命令を混同するでしょうし、どちらにしても反論してくるでしょう。
「お母さんが喜ぶからと言って、友達と仲良くしたり、学校に行ったりするものでもない」とか、「なぜ、お母さんに言われて勉強しなければならないのか?」などと言ってくるかもしれませんが、これは、子供の意見として逆にきちんと受け止めなければなりません。
このようなやり取りは、意見の交換ですから、子供の意見に対して、「そんな口答えを親にしてないで、学校に行きなさい」などと、上から抑えつけるような言葉が出てしまうと、意見に対して、命令をしてしまった事になります。
親が意見を子供に言う事で、子供はそれを受け取って、どう感じ、行動するかを判断する材料に変換します。ですから、親は、自分の発した意見は、子供に対して情報になるという事を頭に入れておくことが重要です。
親は過剰な対応をせず、子供自身が決めたことを、じっと見守る事が本人の為になる
子供が寝坊して、学校に遅刻してしまった事を、「私が起こさなかったのが悪い」と思う母親がいますが、それは違います。また、「どうして、起こしてくれなかったんだ」と子供が親のせいにすることでもありません。学校に通っているのは子供ですから、寝坊して先生に指導されるのも、子供の責任です。
ですから、子供が学校に行かないことで、将来困ったり、後悔する事があっても、本来は全て子供が背負えば良い事です。
不登校になる事は、困った行動ではありますが、他人に迷惑はかけていませんので、学校に行くか行かないかも、本人に決めさせて良いことです。
ところが、つい親は「学校に行きなさい」と言ってしまいますが、いくら言っても本人が行きたくないと思っていれば、無理に行かせても解決にはなりません。「行かなくては!」と思わないと意味がありません。
親が子供の将来と幸せを願う事は当然ですが、それは、子供が親の願い通りに生きる事ではありません。最終的にどうしたいのかを選んで決定する事は、あくまで子供の意思に任せる事が、原則です。
子供が、学校に行きたくないと言ったら、まずは子供とじっくり話し合いましょう。「何言ってるの?いいからとにかく行きなさい」と命令してしまうと、事態が悪化するばかりです。
また、逆に「行かなくて良い」と言うのも結果は同じになります。それは、学校に行くことも行かない事も、親が決めてしまっているからです。
「学校に行きたくない」と言われたら、まずは理由をきちんと聞きます。そのうえで、行かない事を了承する代わりに、「じゃあ、お父さんとお母さんは、どうすれば良いの?」と聞き返してみましょう。すると、「とにかくしばらくは学校を休みたいから、そっとしておいてほしい」などという返事が返ってくるはずです。
ここで、親は、「しばらくってどのくらい?」などと聞くのではなく、大変な事ではありますが、子供をただ見守っているしかありません。再び学校に行けるようになるまでには、数日という子供もいますが、時には数年かかる事も珍しくありません。
つい心配のあまり、「もう学校行った方が良いんじゃない?」と言ってしまうと、何にもなりません。そしてまた、「行きなさい」と言われて学校に行ける子供はとても少ないのが現状です。
もし、無理矢理学校に行かせて、それが成功したとしても、嫌な気持ちが強すぎて、勉強面で良い結果に結びつくとは考えられません。
さらには、学校には行ったとしても、自分の事は自分で決めて、責任を取るという事をやらなくなってしまう可能性もあります。結果として、さらなる問題を引き起こしてしまう事にもなります。
子供が決めなくてはいけない事は、子供に決めさせ、その責任も本人に背負わせます。親はじっと見守り、必要に応じて手助けをする程度でいる事が、長い目で見て一番子供の為になる方法です。
親が子供の代わりに責任を取る事はできない。不登校になって困るのは、子供自身である
「僕が、学校に行けなくなったのは親のせいだ!」とか「我が子が学校に行けなくなった責任は、全て親である私にあります」など、子供は誰かのせいにして、親は自分のせいだと主張するような親子関係は、日本独特だと言われています。
勉強をしない事により生まれる不利益は、子供に振り掛かります。万引きをしたり、非行に走って、ゆくゆく困るのも子供です。
不登校も同じで、親が学校に行かせないという事ではありません。本人が行かないと決めた事ですから、進級や勉強が遅れたり、友達と遊べなくなるのも、自分ですべて受け入れるしかありません。
それを、日本の親は、子供に受け止めさせず、親が換わって責任を取ろうとしてしまいます。親がしなくてはいけないのは、責任を換わる事ではなく、子供自身が起こしたことで生じる不利益や責任を、受け止めるように促す事と、その勇気を持たす事です。
きついことかもしれませんが、「学校に行きたくなければ、行かなくて良いけれど、そのせいで起こるいろいろな問題は、あなた自身が受け入れて、責任を取るのよ」と親は言ってあげます。
さらに親は、学校に行かないと、良い高校や大学に入れないなどと、学歴を重視した考えを早く改める事です。学歴が無いから生きられないわけではありません。学歴を重視した考えを持つ親が、両親とも高卒だったりすると、お互いが持つ学歴コンプレックスから、「我が子は絶対大学へ進学しなくては、幸せになれない」と思っている場合もあります。
この両親は、「私達は高卒だから不幸せだ」と思って生きていても、子供は今のままで十分幸せなら、それで良いのではないでしょうか。
さらに、子供が非行に走ると、親や兄弟親戚まで根掘り葉掘り調査して、取り調べの材料にしてしまうのも、日本の社会の特長です。子供が非行に走るのは親が悪いという見方もとても多く、親が自殺をしたりして責任をとったように思われてしまうのも、その1つです。
あくまで、これは子供の問題であって、子供が責任を引き受ける事を、常に大人は考えて対応しなければなりません。
校則を破る事で学ぶ人生もある。だから親は、校則違反をしたらどうなるかだけを伝える
思春期の子供は、校則を破ってまで何かをしたいと思う事も良くあります。女子高生はピアスの穴を、校則を破ってでも開けたいと思う事も多いでしょう。
親はそれを、「校則違反になるからダメだ」と頭ごなしに怒ってしまいがちです。でも、ここでのやり取りは、子供にとっては、自分で将来の事を考えたりする良いきっかけにもなります。
たとえば、ピアスの穴を開けたいと子供が思っている事を親は知ります。その時に、「校則違反だからダメ」とだけ言うのではなく、「ピアスの穴を開ける事は、校則違反で、違反者は停学になるのを知っているよね?それでもいいの?」と冷静に確認をします。
それを分かっているというのであれば、あとは子供にどうするかは決めさせましょう。「ピアスの穴くらいで停学になるなんて、こんな高校間違っている」などと親に言ってくるかもしれません。
それに対して、親は、「私は、高校生がピアスをするのはあまり好きではないし、校則を作ったのも私ではないから、何もできないよ。校則に納得できなくても、こういうルールが守れるので通学しますという誓約書にサインもしているから、守らなくてはいけないよ」と教えます。
それでもなお、納得できないと子供が言うのであれば、「生徒会総会でも開いて、学校側と話し合いをしてみたら?」と言いましょう。それで本当に、生徒会総会を開くような行動を取ったら、子供にとってはその経験が人生のプラスになります。
逆に、校則を破り、ピアスの穴を開けた事で停学になったとしても、そこから子供が何かを学び、将来に生かせるなら、それもまたプラスです。
このようなやり取りの際に、親が注意しなければならないのは、自分が持つイメージや固定概念を子供に押し付けるような発言をしない事です。親が高校生の頃と、子供の高校生の時代は事情が全く違います。それなのに、親が自分の高校生時代から得た考え方を押し付けても、子供とはぶつかり合うだけです。
親が子供の意見や疑問を否定してしまうと、子供の学ぶチャンスを奪う事になります。子供が選んだ道で失敗しても、そこからいかに多くの大切な事が学べるかを、考えてあげるのが親の努めです。
子供がルール違反をしたら、親は覚悟を決め、子供にきちんとペナルティを受けさせる
学校に行かないのとは違い、万引きや暴力で、他人に迷惑をかけたり、ケガをさせたりした場合には、「これは本人の責任だから」とか「本人の自由だから」などと片づけるわけにはいきません。
私達が社会の中で生きていくために、他人に迷惑をかけてはいけないというルールをお互いに守っているから、たくさんの人々が互いに交わって生活していけます。
動物のような弱肉強食の社会のルールを、人間界に用いてしまったら、世の中は、あっという間に駄目になります。集団で協力したり、互いに無い部分を補い合うからこそ、社会が成り立っています。万引きや暴力は、このような社会を破壊する事につながり、決して許されない行為です。
子供が、もし万引きをしたと分かれば、親はすぐ「自分で返してきなさい」と言い、自分のした行為に自分で責任を取るような行動を促します。そして、1人で行けないなら、一緒に行ってあげると伝えましょう。
不登校の場合は、本人が困るだけで、特に他人に迷惑をかけているわけではありません。しかし、万引きや暴力は、他人に不利益を与える為、それなりのペナルティを受ける事が大切ですし、そもそも日本は法治国家ですので、それが義務づけられています。
場合によっては、少年院や鑑別所行きになる事態になっても、凛とした態度で親は送り出す覚悟が必要です。これが、子供が立ち直るためのベストな方法です。
これを、「私がもう2度とやらないように、きつくしつけますから、今回は見逃して下さい」などと言ってしまうと、子供が自ら責任を取る事をせず、立ち直る事ができません。また、弁償金などの返済能力が無く、親が肩代わりをしたとしても、その分の返済は、長い時間がかかっても、きっちりしてもらうべきです。
謝罪を含めたこの一連の処理を、親は、自分だけが動いて済ませてしまおうと思いがちですが、それでは、子供が起こした行為の責任を、自分で取るという事から、外れてしまいます。ルールを破ったのは子供ですので、謝罪は子供自身がする事がとても大切です。
親は、不利益を含めた複数の情報を子供に提供し、自身の行動に責任が取れるよう促す
羽仁未央さんという、一部では「登校拒否の先駆け」などとも言われた方がいます。この方は、映画監督の父と女優の母を持ち、比較的経済面にも恵まれた環境で育ちましたが、小学4年生から不登校になり、そのまま学校に行くことなく、やがて映画監督やドキュメンタリー番組などの製作をして活躍をしました。
このようなエピソードを知り、「この人のような場合は、裕福な家に育ったから、学校に行かなくても対処ができたし、もともと才能があったのだ」と、思う人もいるでしょう。でも、意外に周囲には、「そういえば、中学校から不登校になったあの子、今は社会人として会社に勤めているな」という人がいないでしょうか。
子供が不登校になってしまった時、親は、「学校に行かなければ、良い会社に就職できない」とか、「みんなにどんどん、学力面で置いて行かれてしまう」と、言ってしまいがちです。でも、羽仁さんのような方や周囲にいた不登校だった同級生のように、学校に行かなくても、社会に出て生活している方は、大勢います。
さらには、現在、日本での義務教育は9年間ですが、地球上には、義務教育がこれより短い国もあります。今、学校に行かないと良い会社に就職できないというのは、親の偏った価値観に過ぎません。
親は、自分の価値観を一方的に伝えるのではなく、情報を子供に与えます。学校に行かない事で生じる不利益もきちんと説明した上で、次のような話し方をします。
例えば、「不登校になってしまうと、出席日数の問題もあるし、内申書は良く書いてもらえない。成績も普通とされる評価より低く付けられてしまう。高校生になったら学校に行ってみたいと思うなら、会場まで行って受験しなければならないよ。全日制の高校の事を、もっと詳しく先生に相談してみようか。」などです。
また、学校に行くか、行かないかというどちらかしか選択肢が無いような印象を、子供が抱いてしまうと、人生に対して不安ばかりが募りますから、情報の与え方には気を配ります。
高校で言えば、全日制ばかりではありません。通信制もあれば定時制もありますので、子供がどのような学習スタイルが良いのかを複数の選択肢から、自ら考えられます。また、将来なりたい職種によっては、中学卒業の資格だけで行ける専門学校もあります。
このように、学校に行っていなくても、複数の選択肢があるから、心配せず自分自身で決めなさいと言ってあげると、子供が、自分で責任を取るような行動へと促されていきます。
非現実的な発言を子供がした時は、親は尊重を忘れず、適切なアドバイスをする
子供自身が決めた事は、基本的には全て尊重してあげます。親と子の関係は、常に対等であると意識していれば、良好な関係へとつながります。
しかし、あまりにも現実的ではない事を、子供が言っている場合は、どうしたらよいでしょうか。例えば、「もう、高校に行くのが嫌になったから、中退して働きながら、高等学校卒業程度認定試験を受けて、合格して大学目指す。」と子供が言ったとします。
高校生だし、子供が自分で決めた事だから、親は素直に尊重できれば良いのですが、このように、現実的ではない発言をした時は、「自分で決めた通りにやりなさい」と言わずに、まず、子供がどのくらいまで理解して、そう決めたのかを確認する事が先決です。
あれこれ質問すると、態度が曖昧である場合には、親はきちんとアドバイスをしなくてはなりません。
高等学校卒業程度認定試験に合格するには、働きながら自分でどうにかするのは、とても難しい事です。予備校に通ってもなかなか簡単ではありません。
それを理解していて、話を聞いたら、自分が働いたお金を受講料に充てて、予備校に通いながら合格を目指したいと答えたのであれば、それはとても現実的な回答ですから、親は尊重してあげましょう。
しかし、働きながら予備校に通うのは、大人でもとても大変です。予備校にも通えて、自分で勉強する時間も確保できるような働き先の当てはあるのか、また、予備校の受講費はいくらで、どのくらいの給料が必要なのか把握しているのかなど、ある程度の具体的な計画の見通しがつくように、親はアドバイスをします。
「世の中、そんな簡単で甘いもんじゃないんだよ」と、ただ漠然と否定した発言を親がしても、建設的な話し合いはできません。
仮に、高校を中退して、働きながら予備校に行き始めたものの、やはりうまくいかずに、全日制に高校を受験し直す事になろうとも、自分で決めた事ですから、親がなんだかんだと言う事ではありません。
若いうちに失敗しておいた方が、やり直せる時間の確保がしやすいのも事実です。現実逃避をしてしまうより、自分で決めた事を実行してみたという事は、子供の人生においても、とても貴重な経験ができたと言えます。
子供同士の付き合い方に、親は割って入らず、能動的な行動ができるように手助けをする
親が「良い子」と思って考える価値観を子供に押し付けると、子供の行動にたくさんブレーキをかけてしまいます。例えば、「こんなテレビを見ていたら、悪い事を覚えてしまうから、見てはいけません」などと否定して、行動を止めさせます。
でも、学校ではこの番組の事を知っている友達が多くて、知らない子供は話題に入る事ができなくて、仲間外れになってしまい、学校が嫌になってしまいます。
同世代の子供が好む文化は、子供に良いか悪いかを判断させて、取り込む事は大切な事です。大人は大人の付き合いがあるように、子供には子供の価値観があって、付き合いがあります。
大人の付き合いに子供が割り込むと話がおかしくなるのと同じように、子供の付き合いに、大人の価値観を押し付けず、基本的に子供の世界を認めて尊重してあげます。そして親は、子供は子供の世界の中で、社会性を身につけ、友達と積極的なコミュニケーションを取りながら、社会に関わっていけるようなアドバイスを与えます。
だからと言って、例えば、仲間外れにならないように、みんなが持っているゲーム機を買い与えるという事ではありません。大人は、ゲームが子供の成長に良いか悪いかを考えてしまいますが、子供は、ゲーム機が無いと仲間に入れない事を問題としているので、この時点で大人と子供の価値観が違う事が分かります。
ここで、ゲーム機を買ってあげたら、仲間外れにされないかもしれませんが、これでは、子供社会の中であっても、常に受け身の状態になっているので、社会性が育まれません。「ゲーム機無しで遊ぶなら、どんな遊びをしてみる?とかみんなに聞いてみたら?」と、提案するように仕向ける事で、積極性や友達とのコミュニケーション力を身につけられます。
また、ゲーム機が欲しい理由を聞いたら、「友達が買ったら?と言ったから」と子供が答えたら、これではあまりにも受け身で流され過ぎですから、まずは「あなた自身は、欲しいと思っている?」と、親は尋ねてみましょう。
そのうえで、自分が欲しいから買いたいという能動的な姿勢を導きつつ、「ゲーム機はいくらするの?お小遣いの中で変えるくらいの金額なの?」と、親は簡単にお金を出してあげるような事は言わずに、自分で欲しいと思うなら、手に入れるために自身の努力が必要である事を覚えさせます。そして、親と意見を交換しながら妥協案を見つけていきます。
子供同士の付き合いを、ただ口を出さずにいるだけではなく、親は、積極的にその社会と関わりを持てるような力を付けさせて、よりアクティブなコミュニケーションを友達と取れるように、手助けをする事が大切です。
今すべき事を子供に決定させ、将来柔軟に対応する能力を身につけさせる
最近は、個性を大事にするような社会の流れもあり、入社試験の際に学歴記入欄を設けない企業も増えてきました。もう、学歴社会と言われてきた時代は昔の事であり、いろいろと見直されてきました。
しかし、子供を持つ親の立場の中には、学歴重視だと思っている人は、たくさんいて、一流大学へ合格する為には、幼稚園受験から重要だと考えています。
一流大学から、一流企業に就職するまで、幼稚園から考えていたら何年先の話になるでしょうか?目まぐるしく変わる日本社会が、今幼稚園へ通う子供が、就職する頃にどうなっているかなど分かりません。何年も先の事を見越した行動をするのは無意味な事だと言えます。
かつて、「ここに勤めたら、一生安泰だ」と言われたような企業が、現在は、赤字回復の為に人員削減を始めたという所も少なくありません。
ましてや、不登校になってしまった子供に向かって、「もう良い所に就職できない」とか、「不登校になったら、結婚相手を見つけるのも難しい」などと、先行きが分からない将来の事を言っても、無意味です。
「過去を追うな。未来を願うな。過去はすでに捨てられた。そして未来はまだやってこない。だから現在の事柄をそれがある所に置いて観察し、揺らぐことなく動ずることなく、よく見極めて実践せよ。ただ今日成すべき事を熱心に成せ。」という、釈迦の言葉があります。この言葉は、不登校の子供にぴったり当てはまるのではないでしょうか。
不登校の子供に対しては、親が、今すぐ解決に向かって動き出さなくてはいけない問題に対してだけ、情報を与えて、子供に決めさせれば良いと思います。中学3年生に限って言えば、高校へ進学するのか、しないのか。進学するならどこが良いのかなどが、子供自身も、どんな選択をしたらどういう事が待っているのかなど予想しながら決定できます。
有名大学を出ても、学歴だけが一人歩きしてしまい、就職先で馴染めずに、思うような業績が残せない人もいます。逆に、中学校卒業してすぐに働き始めて、やがて起業し、大卒の人を雇用している人もいます。
私達が、「不登校になってしまうと、お先真っ暗で将来全部駄目になる」と思ってしまうのは何故でしょうか?それは、知らず知らずのうちに親や、周囲から植え付けられてしまっている思い込みに過ぎません。
「家族みんなに協力してもらっている」という言い方にすると、子供は言う事を聞いてくれる
「ああ言えばこう言う」という言葉があります。親が子供にやってほしい事を頼むと、意外に一筋縄では行かない事も多いのではないでしょうか?
例えば、母親も片づけず、リビングが散らかっているのに、子供に部屋を片付けなさいと言うと、「お母さんも僕の事言えないよね。だってリビングがいつも散らかってるし」と返してきます。
これは、子供の意見が正論です。家族が集う部屋がいつも散らかっているのに、子供部屋だけきれいにしなさいと言っても、言う事は聞いてくれません。
しかし、母親がきれい好きで、とても良く片づけられているのに、子供部屋だけとても散らかっている場合で、片付けなさいと言っても、「ここは僕の部屋だ。僕がどこに何があるか分かっていれば、散らかっていようが関係ない」と反抗する子供がいたらどうでしょうか。
このような場合は、家族全員に協力してほしいというようにお願いします。「家の中全体的に片づけて、不用品など処分したいと考えているから、まずは、一端自分で自分の部屋を今週中に片付けてくれる?お願いね」などと言ってみます。
また、「この家は、家族みんなの家だから、みんなが気持ち良く過ごせるように、いつも片付けや掃除をしてきれいにしておこうね。だから、あなたも自分の部屋を片付けておいてね」でも良いと思います。
ここまで言っても、片づけない場合は、「全部片づけられていない物は箱にしまって、物置に入れておくね。後から自分で片付けなさい」と言います。それでもなお、子供が反抗的で、「僕の部屋なんだから、良いじゃないか散らかっていても。放っておいてよ!」と言ってくる場合もあるかもしれません。
そんな時でも、耐えかねて、「良いからとにかく片付けなさい!」と言ってしまうのではなく、あくまで家族みんなに協力してほしいという姿勢を崩さず、「どうしても、みんなに協力してほしいの。家族みんなで協力して家をきれいにできたら、気持ちいでしょう?」と言ってみます。
これなら、僕ばかりというようには思いませんし、「お母さんは、家族の一員として、この僕に、部屋をきれいにしてほしいと言っているのか」と、協力する気持ちも湧いてくると思います。
子供が部屋を散らかしっぱなしにするのは、親に自分が注目されていないと感じて、無意識に起こす困った行動の場合が多いです。部屋を散らかせば、親が自分に注目してくれると思っています。
でも、このように家族みんなに協力してほしいとお願いする事で、「いつもきれいに部屋をしておいても、お母さんは僕に注目してくれるんだな」と分かるきっかけになります。
家庭のルールは、子供が納得しているルールでなければ、家族仲も悪くなる
例えば、「スマートフォンは、夜の12時から、朝の6時まで使用禁止。また、家で使用する時には、自分の部屋に持ち込まず、リビングで使用する事」というルールを家庭で決めたとします。
家庭によってルールは様々ですし、制限のない家庭もあります。こんなルールを決められて、よその家と比較したり、不満を言ったりすることがあるかもしれません。
それでも、親は、これは我が家のルールだからとして、譲らない姿勢を崩さないようにします。すると、初めは、何とかして深夜もスマートフォンが使えるように懇願したりしましたが、譲らない親を見ているので、深夜に長電話をしたがる友達がいても、「ごめんね。うちは、夜の11時からスマホが使えないの」と断るようになっていきます。
このように、親からの提案で決めたルールでも、これに対して子供が納得している事が重要になります。また、納得させるためには、ルール違反をした時の罰則を親子で決め合うと、効果的です。一方的な親側の提案を押し付けるのではなく、親と子供の双方からの意見を出し合って決めていきます。
一週間一切のスマートフォンの使用を禁止するとか、お小遣いを半額にする、一週間ごみを集積所に捨てに行くなど、様々な案が出てくるでしょう。10発平手打ちをするなどの暴力はもってのほかです。お互いに話し合ってなら、子供も納得できると思います。
では、家庭のルールに対して、子供がどうしても納得できないと言い出したらどうすればよいでしょうか。その場合は、1人だけのルールではなく、家族全員の基本的な約束事で、お父さんもお母さんも、お姉ちゃんも家族みんなが守っている事だから、家族の一員である以上は、守ってもらわなければ困ると言ってみます。
それでも納得がいかないと言うのであれば、「じゃあ、家族みんなが賛成できる、代わりの案を出してみて」と提案してみましょう。賛成してもらえるように、本気で案を考えますから、そこで家族が賛成できる案が出されたら、ルールは素直に変えてあげます。
親が一方的に、親の権力を使って、「これは親の命令だ。親の言う事が聞けないなら、おまえはいらない。出ていけ!」などと言うのはNGです。
家族みんなのルールを決めて、お互いが納得する事は、仲良く暮らしていけるし、家族に一員であるという意識をもって子供も過ごしていけるので、困った行動を起こす事も少なくなるのです。
更新日:2023/05/31|公開日:2019/05/14|タグ:困った行動